中小企業診断士試験2次試験は、一次試験に突破した20%の受験生のうち、さらに20%しか合格しない、診断士試験における最大の難関と言われています。
それにもかかわらず公式解答や解答基準も存在しないため正しい勉強の仕方がわからない、そういった方も多いと思います。
本記事では、診断士試験2次試験で本当に必要な解答の観点と、それを身につける手段についてお伝えします。
なぜ中小企業診断士試験2次試験は難しいと言われるのか
中小企業診断士2次試験を合格された方、残念ながら不合格となった方、これから受験される方全員が口をそろえて言います。
おそらくその最大の理由は、『唯一絶対の正解がない』ことです。ご存じの通り、中小企業診断士2次試験には明確な公式解答や解答基準が存在しません。
もちろん診断士2次試験突破の難易度が極めて高いのは事実ですが(受験生全体の4%程度)、それ以上に、過去問をどれだけ解いても、年々予備校に通っても唯一絶対の正解にたどり着けないことが本試験の困難さを演出しているのではないでしょうか。
しかし、中小企業診断士2次試験が『中小企業の経営課題に対応するための診断・助言』を問う試験とすると、『唯一絶対の正解がない』のは当然のことです。
実務を考えると、中小企業に限らず経営課題の診断、およびそれに対応するための助言にはただ一つの正解はないはずです。
診断士2次試験合格に必要な『2つの観点』
では、唯一絶対の正解がなく、公式解答や解答基準が存在しない診断士2次試験に合格するための秘訣は何でしょうか。
なかなか合格できない診断士受験生の中には、「採点者次第で合否が決まる客観性のない試験」と言う方もいらっしゃいますがとんでもないです。
むしろ『中小企業の経営課題に対応するための診断・助言』する能力を図るためのベストな試験です。
結果、最終年度には100%合格する自信があったほど、合格のための秘訣を掴むことができました・
診断士2次試験で「何を求められているか」
診断士2次試験に合格するためには、『とにかく問題を解きまくる』以前に、本試験を通して「何を求められているか」を理解することが重要です。
ちまたの対策本や予備校で診断士2次試験の対策をすると、『9つの切り口!』、『11つのポイント!』等謳っていますが、正直覚えきれません…。
重要なのはたった2つの観点(フレームワーク・与件ベース)
- コンサルティング知識(フレームワーク)が適切に使えているか
- 顧客視点(与件ベース)のコンサルティングができているか
実際のコンサルティングの現場でも、顧客の実情に則していないコンサルティング(与件ベースでない)や、思いつきのように思えるコンサルティング(フレームワークがない)は多々あります。
どちらかが重要ということではなく、両方ができていることが重要です。
これが全ての問題でできており、事例ごとの回答の筋が通っていれば間違いなく合格ラインに乗ります。
2次試験の合格率は平均20%、裏を返せば80%の受験生がこの基本を知らない、またはできていないということになります。
皆さんも下記のような、フレームワーク×与件ベースが意識できていない解答をしていないでしょうか。
- 「○○(与件ヒント1)や△△(与件ヒント2)や××(与件ヒント3)すべきである」
(フレームワークを適用していない) - 「(一般的に○○業は△△という特性をもつため)××すべきである」
(与件ベースの回答ができていない)
以下、フレームワークの適用および与件ベースの回答について説明します。
ベース 基本的な論理的思考(読み書きスキル)が備わっているか
中小企業診断士2次試験の合格に重要なのはたった2つの観点、と言いましたがそのベースとして基本的な論理的思考は見られています。
「論理的思考」、というと難しく考えがちですが、いわば下記のような読み書きスキルです。
- 問われていることに対して解答すること
- 結論を先に述べ、次にその根拠は具体例を述べること
例えば、
という設問に対して以下はNG回答です。
問われていること(戦略)に対してまっすぐに解答していません。また、結論が最後のため、論点がわかりにくいです。例を読むとわかりやすいですが、実際にご自身で解答を作成するとNG解答のような解答になりがちです。
上記を考慮した解答構成は以下です。
観点① コンサルティグ知識(フレームワーク)が適切に使えているか
合格に重要な観点の一つめはコンサルティング知識が適切に使えているかです。
コンサルティング知識とは、圧倒的な業界・業務知識ではなくSWOT・3Cといった、中小企業診断士一次試験で学んだフレームワークです。
解答の切り口にフレームワークを適用することで解答の説得力が増します。(逆に、フレームワークに沿って解答していないと前述のように思いつきの解答のように見えてしまいます)
例えば、
という設問に対して以下はNG回答です。
せっかく与件上のヒントを活かしているにもかかわらず、フレームワークが適用されていないために小学生の国語の解答のようになっています。
上記を考慮した解答構成は以下です。
どうでしょうか。切り口を入れるだけで説得力が増していることがわかると思います。
活用するフレームワークは事例ごとに異なります。フレームワークを使いこなせるようになるには、フレームワークを常に意識しながら問題に向き合うしかありません。
各事例で活用するフレームワークを学びたい方は、下記の記事を合わせてお読みください。

観点② 顧客視点(与件ベース)のコンサルティングができているか
合格に重要な観点の二つめは顧客視点のコンサルティングができているかです。
「与件ベースで解答せよ」というのは各対策書籍や予備校で言われているためご存じかもしれませんが、とても重要な観点です。
現実のコンサルティングにおいても、なまじ業界・業務知識があるほど顧客視点が失われがちです。
解答のためのヒントは必ず与件に入っていると考えてください。
MBAのケーススタディでは、記述されていないことに対し仮定を立てながら進めるため、MBA形式のケーススタディ研修に参加すると、「この人は診断士2次試験受験者だな」とわかることがあります。
診断士2次試験学習のアプローチ
これまで診断士2次試験合格に必要な2つの観点(+ベース)をお伝えしてきました。
では、この合格に必要な2つの観点を磨くための方法を紹介します。
過去問を徹底的に繰り返す
結論からいうと、『過去問を徹底的に繰り返す』ことが全てです。
様々な2次試験の問題に触れるよりも最低でも過去5年分の過去問を時間が許す限り解き続ける方が圧倒的に力がつきます。
「解答を覚えてしまうから複数回解く意味はない」という受験生もおられますが、合格者に聞くと全員、過去問を繰り返したと言っています。
診断士2次試験の過去問が何回解いても気づきがあるほどの良問なのです。
「診断士2次試験は対策本ごと解答が異なる。どの過去問が良いのか。」とよく問われますが、結論はどの過去問でもよいと思います。
ポイントは、ご自身が何冊か『解答』に目を通し、フィットしたものを1冊だけやり続けることです。複数の対策本の解答を比較学習しても混乱を招くだけです。
私は、あえていえば5年分掲載している過去問という観点で「中小企業診断士 第2次試験過去問題集」を解き続けました。
1点、事例IV(財務・会計)だけは例外で多くの問題に触れたほうがよいため、「中小企業診断士 集中特訓 財務・会計 」といった財務・会計特化本を追加でやりこみましょう。
「ふぞろいな合格答案」の是非
「ふぞろいな合格答案は合格のために有効か?」という質問もよくいただきます。
「ふぞろいな合格答案」は有名な過去問題集の一つ、近年合格した先輩診断士数名が、自身の解答を掲載している1冊で、この本に掲載されることを目標に診断士を目指す方も多いです。
各設問に数パターンの解答が掲載されるため、診断士二次試験の合格解答の広さを把握できる本です。
私の考えでは、二次試験学習の初めに「二次試験の合格解答の広さ」を把握するためには優秀ですが、この1冊と受験勉強を共にするのは危険もあります。
各設問に数パターンの解答が掲載されていることで、自身の正解パターンを崩されることにもなりかねないためです。
まとめ
中小企業診断士試験の最大の難関である二次試験では、『適切なフレームワークの適用』×『与件ベースの回答』が最重要な2つの観点であることをご紹介させていただきました。
またこれらの観点を身につけるのには過去問を繰り返すのが最大の近道です。
本日お伝えした点を意識しながら力をつけ、診断士二次試験を突破しましょう!
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