『業務改善』のノウハウ(現場担当者こそがプロジェクト成功のカギ)

コンサル-業務改善のノウハウ中小企業診断士

業務改善』というと、専門のコンサルタントが行うもので自分には無関係、と考える方も少なくないのではないでしょうか。

しかし実際には、業務改善はビジネスの至るところで行われており、専門のコンサルタントよりも、むしろ現場で働くご自身が成功のカギを握るものです。

本記事では、『業務改善』を行う上での流れや、重要なポイントについて紹介します。

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「業務改善」とは?

業務改善』とは、現状の業務目的や業務フローを見直すことにより、「業務効率化」や「コスト削減」を行うことです。

業務改善というと、いわゆるERPパッケージの導入をイメージされるかもしれませんが、必ずしもシステム導入を伴うものではなく、業務手順の変更・簡易化といったものも立派な業務改善といえます。

業務改善は、大きく以下の5フェーズに分類することができます。

  1. Concept(構想策定)
  2. Assess(現状分析)
  3. Design(施策策定)
  4. Decision(意思決定)
  5. Change(変革実行)

業務改善フェーズ

以下、業務改善の5フェーズについて、重要なポイントを紹介します。

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Concept(構想策定)

Concept』フェーズでは、業務改善を行う目的や条件などの構想を策定します。

本フェーズで重要なポイントは以下となります。

制約条件を明確にする

制約条件のないプロジェクトは存在しません。

業務改善に着手する最初の段階で、「どのくらいの期間で解決すべきか」、「コストはどれだけ投入できるのか」、「システム導入を伴う改善は可か」…など制約条件を明らかにしましょう。

上記はわかりやすい制約条件ですが、他にも「会社としての守るべきポリシー・戦略」なども明確にすべき制約条件となります。

制約条件が無いと、各ステークホルダーがブレストレベルで考え始め発散してしまいますが、制約条件が明らかになることで、できることの方向性が定まってきます。

様々なタイプのステークホルダーを集める

自身が業務改善のプロジェクトリーダーになると、つい自分と同じ、または近い志を持つ者を集めたくなりますが、業務改善においてはNGです。

むしろ、異なる考え方を持つ者など、様々なタイプのステークホルダーを立ち上げ時に集め、ではどうすればよいか、を徹底的に練ることが『業務改善成功』のカギです。

業務改善成功』とは、現場全体に新しい業務プロセスが適用・浸透することに他ならないからです。

各部門から代表者を選出する手法は一見有効に見えますが、この場合、本来全体最適で行うべき業務改善が、部分最適(自部門にとって負担が無いか)に偏りがちになってしまうため、これも避けるべきといえます。
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Assessment(現状分析)

Assessment』フェーズでは、As-Is(現状)の分析を行います。

本フェーズで重要なポイントは以下となります。

現状分析は必ず必要

現場担当者にとって、『現状』は明確であるものであるため本ステップは不要、と考えられがちですが、現象分析は必ず必要です。

現状を可視化してみると、必ずと言ってもいいほどプロセスやクライテリアが共通認識ではなかったことが浮き彫りになります。

管理者が当然できていると考えていたことが現場はできていなかった、頻繁にプロセスが変わる業務で、現場担当者ごとに適用しているプロセスがバラバラだった…こういったことは日常茶飯事なのです。

主観と客観は区別する

現状分析では、目に見えているオペレーションやコストなどに加え、現場担当者のヒアリングが重要となってきます。

重要なのは、前者は『客観データ』、つまり誰が見ても同一の解釈となるものですが、後者は『主観データ』、つまり話し手や聞き手によって全く解釈が異なる可能性があるというわけです。

ヒアリングなどの場において、「トラブルがとても多い」という声があった場合、可能な限り「月に平均○件のトラブルが発生」と、可能な限り客観データとなるよう心がけましょう。

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Design(施策策定)

Design』フェーズでは、As-IsとTo-Be(あるべき姿)のギャップを埋める施策を策定します。

本フェーズで重要なポイントは以下となります。

基本はECRS

いわずもがな、業務改善の基本は『ECRS(排除・結合・入れ替え・簡素化)』です。

  1. Eliminate(排除)
  2. Combine(結合)
  3. Rearrange(入れ替え)
  4. Simplify(簡素化)

業務改善プロジェクトというと、抜本的な改革を行いたくなりますが、施策の何を差し置いても、まずはECRSで改善することができないか、を考えるようにしましょう。

あるべき姿は全員で合意する

To-Be(あるべき姿)』はステークホルダー全員で合意しなければいけません。

一見、当たり前のようですが、『業務改善成功』のカギと言えます。

業務改善のステークホルダー全員があるべき姿に前向きというのは極めて稀で、「現状維持バイアス」が働き、自身の働き方を変えたくない方が反対勢力として立ちはだかります。

これらの反対勢力を可能な限り早い段階で巻き込み、合意に至るようにしましょう。

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Decision (意思決定)

Decision』フェーズでは、策定した施策を実行に移すか否かの経営陣による意思決定をします。

本フェーズで重要なポイントは以下となります。

「ロマン」と「ソロバン」を語る

業務改善を実行に移すか否かにおいては、『ロマン』と『ソロバン』を語らなければ経営陣は動かされないと言われています。

ソロバン』とは定量的なメリット、つまり業務改善による費用対効果などを意味します。

ロマン』とは定性的なメリット、つまり業務改善により「これまでよりも早くサービスを提供することができ顧客を笑顔にすることができる」といった、ビジョンを意味します。

ご自身が物事の説得を受ける際を想定すると、どちらかだけでは心は動かされないことがわかるでしょう。

複数オプションを準備する

経営陣による意思決定に向けては、ご自身が提案者の立場にいると、ベストケースだけを全面に出したシナリオを提案したいですが、受け手の立場からすると、ベストケース・ワーストケース・中間の最低3パターンがあることで、初めて納得感が生まれます。

これは必ずしも意思決定に向けて準備するものではなく、プロジェクトの初期段階にステークホルダーと共有し、ワーストケースだと費用対効果はマイナスとなるが、それでもやる価値があるかどうか、などに立ち返るための材料となります。

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Change (変革実行)

Change』フェーズでは、実際に変革の実行を行います。

本フェーズで重要なポイントは以下となります。

トップダウンとボトムアップ両面から変える

変革実行においては、現場担当者だけを動かそうとしても「現状維持バイアス」が働きなかなか動きません。

現場担当者を動かすには、「○○という組織目標のため変革を実行したい・しなければいけない」というトップからのメッセージが必要です。

一方、トップからの命令だけでも現場担当者は動きません。

トップメッセージを自身の作業・プロセスにどう落とし込めばよいのか、変革実行者がサポートしてあげる必要があります。

このように、トップダウン、ボトムアップ両面のアプロ―チを行わなければ変革は実行されないことを認識しておきましょう。

反対勢力をコントロールする

変革実行における最大の壁は『反対勢力』の存在です。

これらの反対勢力を早い段階で巻き込み、動かしていく必要があります。

反対勢力よりも対応が困難となるのが、「サイレント・マジョリティ」です。
反対勢力は主張が明確であるため彼らのメリットを伝えることで説得することができますが、サイレント・マジョリティは主張がわからないにも関わらず、変革に協力しないという立場であるためです。
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まとめ

本記事では『業務改善』を行う上での流れや、重要なポイントについて紹介しました。

業務改善について深く学びたい方は、下記のような書籍で学ばれることをオススメします。


明日からご自身も「業務改善のプロフェッショナル」として、現場をより良い方向へ変えていきましょう!

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