診断士2次試験の事例IVは財務・会計を問われる事例であり、苦手意識を持たれてる方も多いです。
逆にいえば、事例IVを得意にすることは、そのまま診断士2次試験の突破に直結します。
本記事では、事例IVの中でも頻出項目であるキャッシュフローについて、おさえておくべきポイントを紹介します。
苦手意識がある方が多いですが、覚えるべきポイントが限られているため、得点源になりうる項目です。
キャッシュフロー計算書作成
キャッシュフローとは
キャッシュフローとは、その名の通り「お金（キャッシュ）の流れ（フロー）」です。
「B/Sの「現金・預金」（当期 – 前期）」に相当するものですが、この「現金・預金」がどのように増減したのか、下記3種類のキャッシュフローに分けて分析することで把握できます。
- 営業活動キャッシュフロー（営業CF）
- 投資活動キャッシュフロー（投資CF）
- 財務活動キャッシュフロー（財務CF）
それぞれのキャッシュフローの意味や、作成方法をおさえておきましょう。
営業活動キャッシュフロー（営業CF）
営業活動キャッシュフローは、企業の本業である営業活動によって生じたキャッシュフローです。
（営業CFの作成は直接法と間接法がありますが、間接法のみおさえておけばよいです）。
営業CF計算書の作成（間接法）
| 税引前当期純利益 | ＋ | P/Lの「税引前当期純利益」 |
| 減価償却費 | ＋ | P/Lの「減価償却費」 （＋製造原価報告書の「減価償却費」） |
| 営業外収益 | － | P/Lの「営業外収益」 |
| 営業外費用 | ＋ | P/Lの「営業外費用」 |
| 特別利益 | － | P/Lの「特別利益」 |
| 特別損失 | ＋ | P/Lの「特別損失」 |
| 売上債権増加額 （減少額） | － (+) | B/Sの「受取手形・売掛金」（当期 – 前期） |
| 棚卸資産増加額 （減少額） | － (+) | B/Sの「棚卸資産」（当期 – 前期） |
| 仕入債務増加額 （減少額） | ＋ (－) | B/Sの「支払手形・買掛金」（当期 – 前期） |
| 小計 | ||
| 利息受取額 | ＋ | P/Lの「営業外収益」のうち利息受取額 |
| 利息支払額 | － | P/Lの「営業外費用」のうち利息支払額 |
| 法人税等支払額 | － | P/Lの「法人税等」 |
| 営業活動CF |
初見ではとても複雑に見えますが、導出過程をしっかりと理解することで営業CFの理解が進みます。
特に以下をおさえておきましょう。
- 各費目がB/S、P/Lのどの費目から構成されるか
- 各科目に対するC/F計算時の増減
税引前当期純利益 ＋ 減価償却費 ∓ 営業外収益(費用) ∓ 特別利益(損失)
「税引前当期純利益」をベースに、「営業利益」を算出していると理解しましょう。
「減価償却費」については、実際には現金支出が発生していない費目のため、P/L計算上では減算していますが、CF計算においては減算されない（＝税引前当期純利益から加算）しているわけです。
－ 運転資本（売上債権＋棚卸資産－仕入債務）増加額
利益受取額(支払額) － 法人税等支払額
ここまで求めてきた小計をベースに、P/L上実際に現金支出が発生した費目を減算します。
ここまでで算出したものが営業CFとなります。
投資活動キャッシュフロー（投資CF）
投資活動キャッシュフローは、有形固定資産の取得など、企業の投資活動によって生じたキャッシュフローです。
投資CF計算書の作成
| 有形固定資産の取得による支出 （売却による収入） | － （＋） | （勘定分析により算出） |
| 投資活動CF |
投資CFを求める際は、下記の勘定分析より算出する必要があります。
取得の場合は、支出額は、問題で与えられています。
売却の場合、以下の流れで収入額を求めます。
- 機械・装置の「期首」と「取得時簿価」の合計額から、「期末」を減算
- さらに今期発生した機械・装置にかかわる「減価償却費」を差し引き「売却時簿価」を求める
- 「売却時簿価」に売却益を加算、あるいは売却損を減算したものが売却による収入となる
※機械・装置にかかわる「減価償却費」は問題で、「製造原価報告書」などで与えられます。P/L上の「減価償却費」ではないため注意が必要です
財務活動キャッシュフロー（財務CF）
財務活動キャッシュフローは、借入金の借り入れや返済など、企業の財務活動によって生じたキャッシュフローです。
投資CF計算書の作成
| 短期借入金の借入による収入 （返済による支出） | ＋ （－） | P/Lの「短期借入金」（当期 – 前期） |
| 長期借入金の借入による収入 （返済による支出） | ＋ （－） | P/Lの「長期借入金」（当期 – 前期） |
| 財務活動CF |
そのほか、「増資」なども財務CF増加の要因となりますが、試験では借入金のみ押さえておけば十分です。
キャッシュフロー分析
診断士2次試験事例IVでは、キャッシュフローの分析が求められるケースがあります。
特に抑えておくべきポイントは以下の2点です。
- フリーキャッシュフロー（FCF）の内訳
- 運転資本の適正化
フリーキャッシュフロー（FCF）
キャッシュフロー分析で最も重要なポイントはフリーキャッシュフロー（FCF）です。
FCFは、「営業CF ＋ 投資CF」 で求められるキャッシュフローで、企業が自由に使える資金となります。
もちろんFCFがプラスであることが好ましいのですが、その内訳として、営業CFおよび投資CFがそれぞれプラスかマイナスかによって、企業状況を説明することができます。
| 営業CF | 投資CF | 想定される企業の状況 |
| ＋ | ＋ | FCFはプラスのため良好だが、適切な投資を行わないことにより将来の成長機会を逸している可能性あり |
| ＋ | － | 営業活動でプラスとなったCFを基に、投資活動を行っている健全な状況（ただしFCFが継続的にマイナスにならないよう注意） |
| － | ＋ | 営業活動によるCFがマイナスの上、資産売却など投資活動の回収によりカバーしている不健全な状況 |
| － | － | 財務CFでカバーするしかない危険な状況 |
運転資本の適正化
事例IVでは多くの場合、営業CFの改善が必要であることがほとんどです。
そして、営業CFの改善策としてはまず「運転資本の減少」を検討することになります。前述の通り、運転士法は以下に分解できます。
| 売上債権の減少 | 債権管理 | 与信管理、現金取引、早期回収 |
| 棚卸資産の減少 | 在庫管理 | 売れ筋管理、在庫処分、SCM強化 |
| 仕入債務の増加 | – | – |
※「仕入債務の増加」検討は基本的に分析の対象外となります。「借りたお金をできるだけ返さない」という施策になってしまうため。
まとめ
本記事では、診断士2次試験の事例IVで頻出項目となるキャッシュフローについて、おさえておくべきポイントを紹介しました。
キャッシュフローは、苦手とされている方が多いですが、覚えるべきポイントが限られているため、得意になることができれば確実に2次試験の合格に近づくことが出来ます。
何度も学習を重ね、得意項目にしていきましょう！
過去問だけで自信が無い方は、「中小企業診断士 集中特訓 財務・会計 」といった財務・会計特化本を何度も解くことで、自信を持てるようになります。
コメント