幅広い心理学のテーマの中で、『産業・組織心理学』は、働く組織や人材、消費者行動に注目した心理学です。
本記事では、「産業・組織心理学」を構成するそれぞれの領域について紹介します。
産業・組織
「産業・組織」心理学は、働くことを扱う心理学のテーマです。
大きく、以下の4つの研究領域に大別されます。
- 組織行動
- 人事
- 作業
- 消費者行動
以下、それぞれの領域における主なポイントを紹介します。
人事
人事心理学の流れ
1900年前後、テイラーが「科学的管理法」を展開、職務設計や課業管理、差別出来高払い制度による動機づけ導入など、近代的な経営管理、人事・労務管理の出発点となりましたが、この合理的な職務設計は、『人間性疎外』の問題を引き起こしました。
これに対し人の視点を中心に補完したのが『産業心理学』であり、産業心理学の父であるミュンスターベルクが「最適の人材の選抜」に「最良の仕事方法」、「最高の効果発揮」という考え方を導入しました。
その後働く人々の人間的な側面に注目したものがメイヨーやレスリスバーガーによる「ホーソン実験」、非公式組織や集団規範などの有効性を発見しました。
メンタルヘルス
働く人々の「メンタルヘルス」は、個人の問題にとどまらず、企業にとっても生産性の向上やリスク回避のため関心が高まっています。
メンタルヘルスに関しては、その原因である「ストレッサー」と、ストレッサーに対する反応である「ストレイン」の2つの面から論じられます。
「ストレイン」は、単にいらいらする、能率が落ちるという軽微なものから、バーンアウト、過労死に至る大きなリスクまで多岐にわたり、企業のメンタルヘルス管理には大きな配慮が要求されます。
組織行動
仕事への動機づけ
仕事への動機づけの問題を探るアプローチは、大きく動機づけの源泉をたどる『内容理論』と動機づけの変化過程に注目する『過程理論』に分類されます。
一方、『過程理論』の代表的な理論として、「ヴルームの道具性期待理論」などが挙げられます。
組織行動
組織の示す価値観について、近年「個人の価値観との一致」が注目されています。
大きな枠組みでは、『個人と組織の適合(Person-Organization fit: P-Oフィット)』の問題と言われており、職場満足や組織コミットメントなどによる適合の高まりが期待されています。
作業
リスクマネジメント
組織に内在する危険要因を管理するために、多くの職場でリスクマネジメントが展開されています。
特に緊急事態では、人間の判断や行動に、以下のようなさまざまなバイアスがかかります。
- 確証バイアス … 自己の願望や信念を裏付ける情報のみを重視・選択する心的傾向
- 正常性バイアス … 危険性を示す情報を正常の範囲内として過小評価する心的傾向
- 多数派同調性バイアス … 他社の動きに合わせて同じ行動をとる心的傾向
事故モデル
リーズンは、不安全行為を以下に分類しました。
- 意図しない行動 … スリップ、ラプス
- 意図した行動 … ミステイク、違反
この中で、『違反』を除く3タイプが、基本的なヒューマンエラーと考えられています。
消費者行動
消費者の心理的メカニズム
消費者の購買意思決定プロセスに影響を与える影響には、大きく『環境の影響(文化など)』と『個人差(ライフスタイルや関与など)』があります。
特に「関与水準」と「ブランド知覚差異」の高低から、4つの購買行動が定義できます。
高関与 | 低関与 | |
知覚差異大 | 複雑な 購買行動 | バラエティ・シーキング型 購買行動 |
知覚差異小 | 不協和低減型 購買行動 | 習慣的 購買行動 |
マーケティング
マーケティング戦略においては、「消費者のブランド志向」や「ブランド専攻」の理解が役に立ちます。
アーカーによるブランドエクィティ理論では、エクイティ(資産)としてのブランドを規定する要因として下記が挙げられています。
- ブランド知名度
- ブランド・ロイヤルティ
- ブランド知覚品質
- ブランド連想
流行
消費者研究においては、社会の中で起こ奇る『流行現象』についても説明されています。
流行の心理的メカニズムを説明する理論として、流行をもたらす要因として、『同調化への欲求』、『差別化への欲求』、『新奇性への欲求』が挙げられています。
まとめ
本記事では、働くことを扱う『産業心理学』のエッセンスについてまとめてみました。
興味を持たれた方は、書籍などでさらに学ばれることをオススメします。
以下の記事にて、心理学検定について詳しくまとめていますので、ご興味あれば合わせてお読みください。

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