幅広い心理学のテーマの中で、『社会・感情・性格心理学』は、社会の中で人々のつながりと関わる心の動きや、物事に対する感情、考え方や行動の個人差となる性格を扱うテーマです。
本記事では、この「社会・感情・性格心理学」を構成するそれぞれの領域について紹介します。
社会・感情・性格
「社会・感情・性格」は、心理学の中で人々のつながりの『社会』での心の動き、物事に対する『感情』、感じ方や行動として現れる『性格』を扱うものです。
- 社会心理学
- 感情心理学
- 性格心理学
以下、それぞれの領域における主なポイントを紹介します。
社会心理学
社会的影響
個人や集団が、他の個人や集団の行動・態度・感情を変化させることを社会的影響と言います。
影響を及ぼす側がそれを意図していない場合、『社会的促進』や『社会的手抜き』といわれ、他社が近くに存在することで一人のときよりも課題の遂行が促進される(社会的促進)、綱引きなどの共同作業で人数が多くなるほど一人あたりの貢献度が下がる(社会的手抜き)現象が起こります。
文化心理学
文化が及ぼす個人や集団の行動への影響や集積として、2つの主要な文化的自己観が展開されており、文化による自己観の違いが、個人の心理プロセス自体に違いをもたらすと言われています。
- 相互独立的自己観 … 自己を他者や周囲の状況から切り離して捉えるもの(西洋文化に見られやすい)
- 相互協調的自己観 … 自己は他者や状況と密接に結びつき、関係性の中で捉えるもの(東洋文化に見られやすい)
マスコミの影響
我々にとってマスメディアの存在は日常生活では不可欠です。
暗黙にも意識的にも大きな影響を受けており、相応に対象化してメディアに接さないと、マスコミで得た情報=自分の意見となる危険もあります。
たとえば、我々は知らず知らずにうちにマスメディアを通して、下記のような効果を受けています。
- アナウンス効果 … 選挙予測報道で優勢と報じられた候補者にさらに票が集まる(勝ち馬効果)、また苦戦と伝えられた候補者に同情票が集まる(負け犬効果)
- 世論形成の公共化モデル(沈黙の螺旋現象) … ある争点に関して立場Aが立場Bにひとたび優勢になると、立場Aへの同調行動が生じ、立場Bの存在が次第に希薄になる
感情心理学
感情の理論
感情に関する理論は、その考え方により下記のように複数の理論が展開されています。
- ジェームズ = ランゲ説(感情の末梢説) … 刺激によって喚起された生理反応が感情体験を引き起こす(泣くから悲しい)
- キャノン = バード説(感情の中枢説)… 身体反応と並行して感情は生じる(悲しいから泣く)
- シャクター = シンガー説(認知覚醒理論)… 感情の2要因理論
感情の生理過程
感情の生理反応は、自律神経系の活動によって生み出され、副腎髄質からのノルアドレナリンの放出などを生じさせます。
強い怒りとそれに伴う暴力はセロトニンの低下に特徴づけられ、また、うつ病や強迫性障害とも関連付けられます。
報酬が与えられる、またはそれが予期されたとき、中脳皮質辺縁系ドーパミン経路におけるドーパミン放出が増加します。
性格心理学
パーソナリティの測定
自他のパーソナリティを知るための方法は多様にわたります。
オールポートによる「個性記述的アプローチ」に対し、多数の人々の行動に共通する一般的な原理・原則の探求を主目的とした「法則定立的アプローチ」に則って研究が進められてきました。
パーソナリティの測定を行う『心理検査』は、大きく以下の3種類に分類されます。
- 投影法 … ロールシャッハテスト、TAT、バウムテスト、HTPテスト、SCT、P-Fスタディ
- 質問紙法 … MPI、EPPS、エゴグラム、MMPI、YG性格検査
- 作業検査法 … 内田クレペリン検査、IAT
主要5因子モデル
ゴールドバーグは、基本辞書仮説を前提として、5因子構造が特性間の関連を最もよく説明していると指摘、これを『ビッグ・ファイブ』と名付けました。
『ビッグ・ファイブ』は以下の5因子から構成されます。
- 外向性(Extroversion)
- 神経症的傾向(Neuroticism)
- 開放性(Openness)
- 協調性(Agreeableness)
- 誠実性(Conscientiousness)
これらの5因子は、それぞれの頭文字をとって『OCEAN』とも呼ばれます。
まとめ
本記事では、働くことを扱う『産業心理学』のエッセンスについてまとめてみました。
興味を持たれた方は、書籍などでさらに学ばれることをオススメします。
以下の記事にて、心理学検定について詳しくまとめていますので、ご興味あれば合わせてお読みください。

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