社会保険労務士試験は、労働や社会保険に関する法律からなる試験ですが、学習においては法律の全体像を把握することが重要となります。
今回は、労働法である『労働安全衛生法』について概要を紹介します。
『労働安全衛生法』は、労働災害を防止するために定められた法律です。
労働安全衛生法とは
労働安全衛生法は、労働者の安全・衛生確保や、快適な職場環境の形成により職場の労働災害を防止するための、事業者や労働者の責務が定められた法律です。
労働基準法については以下に詳細をまとめていますので、合わせてお読みください。
安衛法では以下の3点が主として定められています。
- 安全衛生管理体制
- 機械や危険物・有害物に対する規制
- 健康診断・面接指導
以下、3点について詳細を説明します。
安全衛生管理体制
事業者の安全衛生活動を確保するため、一定規模の事業場ごとに、さらに建設業では現場ごとに安全衛生管理体制の設置が義務付けられています。
事業場の安全衛生管理体制
事業場においては、下記4者から成る管理体制が必要となります。
管理体制 | 役割 | 設置条件 |
総括安全衛生管理者 | 事業を統括管理する者 | 一定の業種で 一定以上の労働者数の事業場 |
安全管理者 | 安全に関する技術的事項を管理する者 | 一定の業種で 常時50人以上の事業場 |
衛生管理者 | 衛生に関する技術的事項を管理する者 | すべての業種で 常時50人以上の事業場 |
産業医 | 労働者の健康管理等を行う医師 | 常時50人以上の事業場 |
建設現場の安全衛生管理体制
建設業では、「事業場の安全衛生管理体制」に加え、建設現場ごとに安全衛生管理体制の設置が義務付けられています。
管理体制 | 役割 | 設置条件 |
統括安全衛生責任者 | 事業実施を統括管理する者 | 建設業または造船業で、 一定以上の労働者数の現場 |
元方安全衛生管理者 | 技術的事項を管理する者 | 建設業で 統括安全衛生責任者がいる現場 |
安全衛生責任者 | 統括安全衛生責任者との連絡・調整 | 建設業または造船業 (下請会社で選任) |
機械や危険物・有害物に関する規制
安衛法では、危険な機械・作業や有害な薬品などについて規制を定義しています。
機械に関する規制
特に危険な作業を必要とする機械など(特定機械等)や、一定の危険。有害な作業を必要とする機械など(42条の機械等)については、一定の規制が定めれられています。
特定機械等 | 製造の許可・検査 |
42条の機械等 | 機械の譲渡などの制限・検査 |
危険物・有害物に関する規制
労働者に重度の健康障害を生ずる物(製造禁止物質)や、重度の健康障害を生ずるおそれのある物(製造許可物質)については、一定の規制が定められています。
製造禁止物質 | 製造・輸入などの禁止 |
製造許可物質 | 製造する際に厚生労働大臣の許可 |
健康診断・面接指導
安衛法では、労働者の健康維持や精神疾患の防止のため、健康診断やストレスチェック、また面接指導について定められています。
健康診断
労働者の健康を管理するため、事業者には、医師による健康診断の実施が義務付けられています。
健康診断は、大きく以下の3種類に分類できます。
一般健康診断 (一般労働者向け) | ・雇い入れ時 ・定期健康診断 ・深夜業などの特定業務従事者 ・6月以上の海外派遣労働者 ・給食従事者 |
特殊健康診断 (有害業務従事者向け) | ・特別の項目についての健康診断 ・歯科医師による健康診断 |
その他 | ・臨時の健康診断 ・労働者の自発的な健康診断 |
また、異常の所見があると診断された労働者は、医師などの意見を聴かなければいけません。
面接指導
長時間労働による過労死や、ストレスによる精神疾患を防止するため、面接指導が安衛法で規定されています。
面接指導は、大きく以下の3つの場合において実施されます。
- 長時間労働者(労働者自身の申し出)
- ストレスが高いと認められた者(労働者自身の申し出)
- 研究開発業務に従事する長時間労働者(労働者自身の申し出に関わらず義務)
※「ストレスが高いと認められた者」とは、安衛法において、常時50人以上の労働者を使用する事業者に対し義務付けられた『ストレスチェック』の結果、医師等が面接指導を受ける必要があると認めたものです。
まとめ
今回は『労働安全衛生法』について紹介しました。
社労士は法律の試験であるため、制度詳細や条文にフォーカスしてしまいがちですが、法律の位置づけや全体像を把握することが重要になります。
長い社労士学習においては、試験勉強のフェーズにかかわらず、下記の入門本に立ち返ってみるのもオススメです。
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