【社労士・労働基準法】立場が弱い労働者を守る多くの基準を覚えよう

社労士-労働基準法社会保険労務士

社会保険労務士試験は、労働や社会保険に関する法律からなる試験ですが、学習においては法律の全体像を把握することが重要となります。

今回は、労働法である『労働基準法』について概要を紹介します。

労働基準法』は、労働者の適切な労務管理を行うためのルールについて定めた法律です。

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労働基準法の概要

労働基準法では、労働者の適切な労務管理を行うために様々な労働条件を定め、立場が弱い労働者を守るしくみづくりをしています。

定められる労働条件は、働く上での基盤となる「労働契約」・「解雇」・「就業規則」だけでなく、お金に関する「賃金」、働く時間や休みに関する「労働時間」・「休憩・休日」・「時間外・休日労働」・「年次有給休暇」、学生や女性保護に関する「児童・年少者」・「女性」まで様々定められています。

労働基準法-項目

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労働契約

労働契約は、労働者と使用者の間で結ぶ契約です。

労働基準法で、立場が弱い労働者が契約で不利にならないよう規則が定められています。

1回の契約期間は、原則3年が限度(契約の更新は認められています)が、「高度の専門的知識を有する労働者」や「満60歳以上の労働者」は、上限が5年となります。

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解雇

労働基準法では、労働者保護の観点から、解雇に関する規則を設けています。

解雇制限

使用者が労働者の解雇ができない(制限されている)期間があります。

  • 業務上の傷病による療養休業期間
  • 産前産後休業期間
  • 上記事由の休業後、出勤後30日間

例外として、「打切補償を支払う場合」や「天災により事業継続できない場合」はその限りではありません。

解雇予告

使用者は、労働者を解雇する場合、少なくとも30日前解雇予告をしなければいけません。

また、解雇予告手当を支払うことで、解雇予告の期日を短縮することができます。

具体的には、30日分以上の解雇予告手当を支払えば、即日解雇できます。
例外として、「天災により事業継続できない場合」や「労働者の責めに基づく解雇」はその限りではありません。
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賃金

賃金支払いの5原則

労働基準法では、賃金の支払いについて下記の5原則を定めています。

  1. 通貨払いの原則
  2. 直接払いの原則
  3. 全額払いの原則
  4. 毎月1回以上払いの原則
  5. 一定期日払いの原則

これらの原則と共に、例外についてもおさえることがポイントです。

通貨払い

賃金は通貨(お金)で支払わなければいけない、という規定です。

例外として、労働者同意により、口座振込みによる支払いを認めています。

皆さんも口座振込みによる支払の方がほとんどだと思いますが、実は口座振込みが「通貨払いの例外」としての取扱いです。

直接払い

賃金は労働者に直接支払わなければいけない、という規定です。

例外として、労働者の使者(本人が病気で受取り不可の場合の家族など)への支払いは認められています。

全額払い

賃金はその全額を支払わなければいけない、という規定です。

例外として、労使協定により、賃金の一部を控除(社宅費用など)し支払うことが認められています。

毎月1回以上払い・一定期日払い

賃金は毎月1回以上、一定期日に支払わなければいけない、という規定です。

例外として、臨時に支払われるもの(退職金など)や賞与は対象外となります。

休業手当

休業手当は、使用者都合の休業などで一時的に労働者を働かせられない際、その間の生活保障として支払わなければいけない手当です。

休業手当額は、平均賃金の60%以上です。

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労働時間

労働基準法では、労働者の長時間労働を防ぐため、労働時間についての規定があります。

法定労働時間・所定労働時間

法定労働時間として、1日や1週間の労働時間が定められています。

1日  8時間以内(休憩時間を除く)
1週間40時間以内(休憩時間を除く)

会社が定める労働時間(所定労働時間)はこの法定労働時間を守る必要があります。

変形労働時間制

事業の種類によっては、時期により忙しさに差があります。

このような場合に労働時間を柔軟に設定する仕組みとして、下記のような『変形労働時間制』が認められています。

  • 会社主体…変形労働時間制(1週間単位、1カ月単位、1年単位)
  • 労働者主体…フレックスタイム制
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休憩・休日

休憩

労働者の実労働時間に応じ、下記のように休憩時間が定められています。

6時間以内不要
6時間超~8時間以内45分以上
8時間超1時間以上

休憩を与える際には、下記を遵守する必要があります。

  • 労働時間の途中に与えること
  • 一斉に与えること
  • 自由に利用させること

休日

休日は、原則、毎週少なくとも1回与えなければいけません。

例外として、4週間を通して4日以上与えることについても、認められています。

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時間外労働・休日労働

労働基準法では、前述のとおり、労働時間休日が定められていますが、企業経営上の必要に応じて、一定の条件の元、時間外労働・休日労働をさせるしくみがあります。

時間外労働・休日労働が認められるのは以下の場合です。

  1. 労使協定(36協定)を結び届け出た場合
  2. 公務のため臨時の必要がある場合
  3. 非常災害の場合

また、時間外労働・休日労働深夜労働をした労働者に対しては、以下の割増賃金の支払が必要です。

時間外労働2割5分以上
深夜労働
休日労働3割5分以上
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年次有給休暇

年次有給休暇は、入社後6カ月勤務、その間の出勤率が8割以上である労働者に対し与えられる休暇です。

年次有給休暇の日数は、勤続年数により次の通り定められています。

勤続年数0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年~
付与日数10111214161820

※パートタイム労働者の場合、付与日数が異なります。

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児童・年少者

労働基準法では、児童・年少者保護の観点から、年齢に応じて就業に関する制限が定められています。

労働基準法-年少者

児童(中学校卒業まで)の制限

使用者は原則、中学校卒業までにある児童を使用してはいけません。

例外として、子役芸能人や新聞配達など、労働が軽いと思われるものについては、労働基準監督署長の許可をとることで満13歳以上であれば使用することができます(子役は満13歳未満も可)。

年少者(満18歳未満)の制限

中学校卒業から満18歳未満にあたる年少者は、労働は許可されているものの、要配慮として、時間外労働・深夜労働・休日労働など一定の制限があります。

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女性

産前産後休業

産前休業は、出産6週間以内予定の女性が休業を請求した際、就業させない規定です。

産後休業は、産後8週間を経過しない女性を就業させない規定です。

産前休業では請求が必要である一方、産後休業は強制であることがポイントです。

妊産婦の労働

妊娠中の女性、および産後1年に満たない女性(妊産婦)に対しての労働制限が規定されています。

妊産婦が請求した場合、法定労働時間超や、時間外・休日労働・深夜業にて働かせることはできません(フレックスタイム制は例外)。

また、満1歳未満の子を育てる女性は、休憩時間以外にも1日2回(各30分)、子育てのための時間を請求できます。

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就業規則

就業規則には、労働者が働く上で守らなければいけない規則が定められています。

就業規則の作成手続

常時10人以上(パートタイム労働者含む)を使用する使用者は、就業規則の作成義務があります。

使用者は就業規則の作成・変更にあたり、以下の者の意見を聴いた意見書を合わせ、労働基準監督署長に届出する必要があります。

  • 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合、労働組合
  • 上記の労働組合が無い場合、労働者の過半数を代表する者

就業規則の記載事項

就業規則には、絶対的必要記載事項、および相対的必要記載事項(会社に定めがある場合記載)があります。

絶対的必要記載事項には、下記のような項目があります。

  • 始業・終業時刻、休憩時間
  • 休日・休暇
  • 賃金、昇給
  • 退職(退職手当除く)
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まとめ

今回は『労働基準法』について紹介しました。

社労士は法律の試験であるため、制度詳細や条文にフォーカスしてしまいがちですが、法律の位置づけや全体像を把握することが重要になります。

長い社労士学習においては、試験勉強のフェーズにかかわらず、下記の入門本に立ち返ってみるのもオススメです。

 

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