【もしもの際に困らないため】人が亡くなった際に必要な手続を知ろう

『人が亡くなった際に必要な手続』を知ろう社会保険労務士

今現在、幸せに生活していたとしても、この先のことは誰にもわかりません。

人の死は突然やってくるもの、人が亡くなった際の手続を今のうちに把握しておくことで、もしもの際に困らないよう今のうちに準備しておきましょう。

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人が亡くなった際の手続

人が亡くなった際、残された人々は喪に服すと共に、やらなければならない手続きも多くあります。

本記事では、人が亡くなった際の主たる手続を以下の4章に分け紹介します。

  • 直近の手続
  • 健康保険と年金
  • 遺言と遺産分割
  • 遺産相続
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直近の手続

ご遺族が亡くなられた際、まずは以下のような直近(2週間以内)必要となる手続を把握しておきましょう。

  • 死亡診断書の受け取り
  • 死亡届の提出(葬儀社が提出する場合あり)
  • 埋火葬許可申請書の提出(葬儀社が提出する場合あり)
  • (必要に応じ)世帯主変更届の提出
  • 埋火葬許可証の受け取り(埋火葬許可証がないと葬儀できない
  • (必要に応じ)健康保険資格喪失届の提出
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健康保険と年金

健康保険と年金で必要な手続のポイントは、確実に受給できる給付申請と、要件が合えば受給できる給付確認・申請です。

  • 確実に受給できる給付 … 葬祭費(健康保険)、未支給年金(年金)など
  • 要件が合えば受給できる給付 … 高額療養費(健康保険)、遺族年金(年金)など
日本の社会保険制度は申請至上主義、当然の権利と思われている年金ですら申請をしなければ受給できません。
ただし、各申請の時効期限内であれば後請求が可能ですので合わせて知っておきましょう。

健康保険

葬祭費

葬儀にかかった費用の一部(最大5万円、ただし例外あり)を、葬儀を行った人に対し支給します。

なお、葬祭費の申請時効は「2年」です。

高額療養費

亡くなられた方が病院や薬局で支払った額が、歴月(1日から末日まで)で自己負担限度額を超えている場合に、超えた分の金額が支給されます。

限度額は、年齢と所得によって変わります。

なお、高額療養費の申請時効は「2年」です。

年金

未支給年金

年金は、偶数月の15日に、前2ヵ月分が振り込まれ、亡くなられた月の分まで受給権が発生します。

亡くなられた方が受け取れなかった年金は、「亡くなられていた方と生計を同じくしていた」などが申請し受給することができます。

なお、未支給年金の申請時効は「5年」です。

遺族年金

遺族に対する生活保障として遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)が受給できます。

遺族年金を受給できる遺族は以下です(いずれも死亡者が主たる生計者である必要あり)。

遺族基礎年金遺族厚生年金
配偶者○(夫は55歳以上)
(18歳未満、または
一定障害の20歳未満)
父母(55歳以上)×
(18歳未満、または
一定障害の20歳未満)
×
祖父母(55歳以上)×

上から順に遺族順位が高くなります。

なお、遺族年金の申請時効は「5年」です。
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遺言と遺産分割

亡くなられた方の遺産をどう分けるかは、まず故人の『遺言』の存在の有無によります。

遺言』が存在する場合、遺言の指定通りに遺産を分けて手続が完了します。

一方、『遺言』が存在しない場合は、相続人全員による『遺産分割協議』により遺産の分け方を決定します(それでも合意に至らない場合は、家庭裁判所による遺産分割調停が行われます)。

遺言

遺言』が存在する場合、遺言の指定通りに遺産を分けて手続が完了します。

遺言の種類

遺言には以下の3種類があります。

自筆証言遺言遺言者が遺言の全文・日付・氏名を自書し押印
公正証書遺言遺言者の口述により公証人が遺言書を作成
秘密証書遺言遺言者が遺言書に署名・押印・封印し、公証人が日付等を記入

上記のうち、「自筆証言遺言」および「秘密証書遺言」は家庭裁判所による検認が必要となります。

遺留分

原則、財産の相続は遺言の内容が最優先ですが、配偶者・子ども・父母などには最低限の相続(遺留分)が法律で認められています。

遺留分は、法定相続分の2分の1(法定相続人が直系尊属のみの場合は3分の1)です。

遺産分割

遺言』が存在しない場合は、相続人全員による『遺産分割協議』により遺産の分け方を決定します。

相続人

相続人や、その順位は民法で規定されています。

配偶者は常に相続人となりますが、それ以外の遺族は下記のように順位が決まっており、上位から相続人となります。

第1順位子 (複数いある場合は共同)
第2順位直系尊属 (第1順位の相続人がいない場合)
第3順位兄弟姉妹 (第1順位、第2順位の相続人がいない場合)

FP-相続(相続人の順位)

法定相続分

遺産は、相続人全員が合意すれば分割の仕方は自由ですが、民法で目安となる『法定相続分』が定められています。

相続人法定相続分その他相続人法定相続分
配偶者1
1/21/2
2/3直系尊属1/3
3/4兄弟姉妹1/4
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遺産相続

遺産相続においては、相続または遺贈・死因贈与による財産取得にかかる『相続税』がポイントとなります。

相続税』は、次の4ステップで算出することができます。

  1. 課税価格計算(=遺産総額 - 非課税財産等)
  2. 課税遺産総額計算(=課税価格 - 基礎控除)
  3. 相続税総額計算(=課税遺産総額 × 税率 の総額)
  4. 納付相続税額計算(=相続税総額 × 実際相続割合)

FP-相続(相続税の算出)

【Step 1】課税価格計算(=遺産総額 - 非課税財産等)

相続税の計算に当たってはまず、『課税価格(=正味相続財産)』を算出します。

課税価格は、以下のように被相続人の「遺産総額」から、「非課税財産」や「債務・葬式費用」を控除したものです。

課税価格 = 遺産総額 - 非課税財産 - 債務控除

遺産総額

相続税の対象となる財産には以下の3種類があります。

本来の相続財産現金・預貯金、有価証券、土地・家屋など
みなし相続財産死亡保険金・死亡退職金など
生前贈与財産相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産

非課税財産

原則、被相続人から相続した財産は相続税対象となりますが、以下については相続税の課税対象外となります。

  • 墓地・墓石・仏壇・仏具など宗教的儀礼に関わるもの
  • 死亡保険金・死亡退職金(500万円×法定相続人の数 まで)

債務控除

被相続人の債務葬式費用は、課税費用から差し引いて算出することができます(債務控除)。

【Step 2】課税遺産総額計算(=課税価格 - 基礎控除)

次に、『課税遺産総額』を算出します。

課税遺産総額は、課税価格から「遺産に係る基礎控除額」を差し引いたものです。

課税遺産総額 = 課税価格 - 遺産に係る基礎控除額

遺産に係る基礎控除額

相続税においては、遺族が過大な相続税の納付により生活に困窮することがないよう基礎控除のしくみが設けられています。

遺産に係る基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

【Step 3】相続税総額計算(=課税遺産総額 × 税率 の総額)

次に、課税遺産相続を法定相続人の法定相続分で按分し各相続人の相続税を算出、合計し『相続税総額』を算出します。

各相続人の相続税額 = 相続人の法定相続分 × 税率

税率は、下記表のように課税所得金額に応じて算出されます。

課税所得金額税率控除額
~ 1,000万円10%
1,000万円 ~ 3,000万円15%50万円
3,000万円 ~ 5,000万円20%200万円
5,000万円 ~ 1億円30%700万円
1億円 ~ 2億円40%1,700万円
2億円 ~ 3億円45%2,700万円
3億円 ~ 6億円50%4,200万円
6億円 ~55%7,200万円

【Step 4】納付相続税額計算(=相続税総額 × 実際相続割合)

最後に、相続税総額を実際の相続割合で按分し相続人ごとが納付する相続税を算出します。

相続人によっては、納付相続税額の「減額」や「増額」が生じます。

相続税の減額

被相続人の配偶者は、被相続人と共に財産を形成したという考え方のもと優遇措置があり、配偶者の取得財産のうち、1億6,000万円を最低保証、超過分も法定相続分まで相続税がかかりません

相続税の増額

被相続人の配偶者や1親等の血族以外の相続人(例:祖父母、兄弟姉妹)に対しては、納付相続税額が2割加算されます。

これらのstepで算出した相続税の申告・納付は、ご遺族の死亡後10ヵ月以内に行います。
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まとめ

本記事では、もしもの際に困らないための人が亡くなった際に必要な手続を紹介しました。

今回は健康保険・年金・相続など大きな手続を中心とした紹介でしたが、実際には各種の名義変更など、細かい手続も多々必要になります。

もしもの際に備え、今のうちに以下のような書籍で準備をしておくことが重要です。

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