『会議のファシリテーション』というと、つい身構える方が多いのではないでしょうか。
しかし、ファシリテーションのはじめの一歩としてはただ1点、『議論の可視化』を意識するだけで質を上げることができます。
本記事では、議論の質を上げる『可視化』を中心に、明日から使えるファシリテーションのポイントについて紹介します。
ファシリテーションとは
ファシリテーション(Facilitation)は、会議などの場で、最終的な合意形成に至るために、参加者から意見やアイディアを引き出したり、相互理解を計るなど、議論の流れをコントロールする機能です。
一般的にファシリテーションというとビジネス会議の場を想定しますが、複数人で行う目的を持ったコミュニケーションには多かれ少なかれファシリテーションの概念が含まれています。
ファシリテーションに必要なスキル
「リーダーシップ」、「対人関係構築能力」、……、ファシリテーションにおいて必要なスキル・能力は挙げたらキリがありませんが、全てのスキル・能力を兼ね備えないとファシリテーションができない、ということはありません。
本記事では、再現性がある(誰でもファシリテーションの一歩を踏み出せる)、ファシリテーションに最も必要なスキル・能力として、本記事では『議論の可視化』について紹介させていただきます。
特に、下記2点の可視化ができているか否かで議論や結論の完成度が異なるものとなります。
- 議論対象(議論の流れ)の可視化
- 議論構造(フレーム・切り口)の可視化
これらの可視化情報は、口頭で伝えるだけでなく、PC画面やホワイトボード、模造紙など、会議の参加者全員が見えるように、物理的に可視化することが重要です。
物理的に可視化されている状態と、されていない状態では参加者間の共通認識が大きくことなります(可視化されていない状態での会議を想像するとその差がわかりやすいと思います)。
また可視化した情報はそのまま議事にもなりますのでメリットしかありません
議論対象(議論の流れ)の可視化
1つめは、議論対象(議論の流れ)の可視化です。
参加者が議論の流れを把握しながら会議を進めることで、今どのフェーズの議論をしているかの共通認識をもつことができます。
その結果、「集約フェーズにもかかわらず新たに発散意見が出て振り出しに戻る」などのズレを防止をすることができます。
議論構成として下記のようなフェーズがあります。
- 前提の擦り合わせ
- 意見の発散・深堀
- 議論の結論
重要なポイントは、各フェーズで必ず参加者間の合意形成を怠らないことです。
前提の擦り合わせ
前提の擦り合わせは、本論に入る前に参加者の前提知識を合わせるプロセスで、「議論の前提となる情報の共有」や「言葉の定義」を行います。
本フェーズは会議においてスキップされがちですが、とても重要なフェーズです。
また、議論中にズレが判明すればまだ良いですが、議論の結論が出た後に気づいてしまったら目も当てられません。
特に「言葉の定義」を疎かにしてはいけません。
必ず本論に入る前に、「今回の議論における『浸透』の定義は何か?」を参加者間で合わせてから本論に入りましょう。
意見の発散・深堀
意見の発散は、議論の目的を達成するための意見やアイディアを幅広く出すプロセスで、いわゆる「ブレーンストーミング(ブレスト)」と言われることもあります。
一方、意見の深堀は、発散フェーズで出た各意見を、参加者が共に具体化していくプロセスです。
ブレストにおける注意点として、ゼロベースで意見発散・深堀を行わないことです。
ゼロベースでの発散・深堀は、必ず「意見の切り口の抜け漏れ」、「レベル感の不統一」が起きります。
議論の結論
本フェーズは、その名の通り、議論の結論を出すプロセスです。
結論を出さなければ議論の目的が達成できていないため、当然ながら重要なフェーズです。
本フェーズの重要なポイントは、『結論の選択基準の明確化』です。
選択基準が無いと、結論に至ることもできませんし、至った結論の参加者間での納得感もありません。
議論構造(フレーム・切り口)の可視化
2つめは、議論構造(フレーム・切り口)の可視化です。主に意見の発散・深堀で重要となるフェーズです。
フレームワーク・切り口は、例えばビジネスでは下記を始めとした普遍的なフレームワークが存在しますが、必ずしも唯一の正解があるわけではありません。
- 3C:自社(Company)、顧客(Customer)、競合(Conpetitor)
- 4P:製品(Product)、価格(Price)、チャネル(Place)、プロモーション(Promotion)
- バリューチェーン:企画、設計、構築、運用
ファシリテーターが議論の前にフレームワーク・切り口を用意しておくとスムーズになるでしょう。
参加者が今議論をしているポイントの切り口を把握しながら会議を進めることで、①MECEな(モレやダブリがない)意見出しを促す、かつ②意見のレベル感(深さ)を統一することができます。
こちらは、前述の議論対象(議論の流れ)の可視化と比べると、できていないことが多いのではないでしょうか。
MECEな意見出し
最初に『価格(Price)』に関する意見が出ると、参加者がその意見に引っ張られ価格に関する意見が出続け、最終的に、例えば『プロモーション(Promotion)』などの観点が全くでなかった、ということはよくあります。
この場合、最初に議論構造(フレーム・切り口)として、『製品(Product)、価格(Price)、チャネル(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの切り口があります』と提示・可視化することで、『今価格(Price)の意見が出たがチャネル(Place)の観点では~』など、幅広い意見・アイディアが出やすくなります。
意見のレベル感の統一
同じ『プロモーション(Promotion)』の意見でも、複数人の意見出しの場では「第三者に新製品を認知してもらう」と、「○月△日の×××イベントに出展する」のようにレベル感が混在します。
この場合においても、出た意見を可視化することで、参加者がレベル感を意識した意見出しをするようになり、また仮に異なるレベル感の意見が出た場合でも、参加者間で気づくことができるために修正しやすく、レベル感の統一に繋がりやすいです。
【補足】グラフィックファシリテーションの必要性
『可視化』というと、ファシリテーションに興味がある方であれば、『グラフィックファシリテーション』というキーワードを聞いたことがあるのではないでしょうか。
確かに、ファシリテーションにおいてグラフィック(文字だけでなく図や記号などの視覚表現)の活用は効果的、またグラフィックファシリテーションは視覚的に鮮やかではありますが、誰もがマネできる技術ではないため、個人的には突き詰める必要はないかと考えています。
興味がある方は、「Graphic Recorder ―議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書 」などで学んでみましょう。
ファシリテーションを学ぶためにオススメの本
本記事ではファシリテーションの最重要ポイントである『議論の可視化』を中心に紹介させていただきましたが、もちろんより良いファシリテーションを目指すためにはより深い勉強が必要です。
以下に、ファシリテーションの勉強に役立つ(もちろん実践で使える)書籍を紹介します。
実践 パワーファシリテーション
「会議の生産性を高める 実践 パワーファシリテーション」は、議論の体系(構成や整理術)がまとまっているファシリテーションの基礎本です。
理想論だけでなく、会議における「リアルなあるある」への対処なども記載してあるため、本書を読んでファシリテーションにすぐに活かせる内容になっています。
図解 組織を変えるファシリテーターの道具箱
「図解 組織を変えるファシリテーターの道具箱」は、議論のテクニックがまとまっているファシリテーションの応用本の位置づけです。
会議の場や参加者によってベストなファシリテーションは異なりますので、本書の50のツールから、自分や、会議の場にあったテクニックを使いこなしてみましょう。
まとめ
本記事では『ファシリテーション』にて最も重要、かつ明日から使えるポイントである『議論の可視化』について紹介しました。
議論の可視化ができているか否かだけで会議・議論の完成度は大きく変わってきますので、さっそく明日からの会議や議論の場で意識してみましょう!
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