【FP】タックスプランニング(所得税の税額計算手順の理解が全て)

FP-タックスプランニング社会保険労務士

FP(ファイナンシャルプランナー)試験は、お金全般に関する試験ですが、学習においては各科目の全体像を把握することが重要となります。

今回は、我々が国や地方に納める様々な「税」のトピック、『タックスプランニング』について概要を紹介します。

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タックスプランニング

タックスプランニング』は、個人向けの直接税である「所得税」や「住民税」、法人向けの間接税である「法人税」、間接税である「消費税」など、様々な『税(タックス)』のしくみや算出方法について学びます。

FP-タックス(試験範囲)

以下、それぞれの項目について概要を紹介します。

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所得税

所得税のしくみ

所得税』は、個人の収入から、その収入を得るためにかかった経費を差し引いた所得にかかる税金で、次の5ステップで算出することができます。

  1. 所得計算(10種類の所得算出)
  2. 課税標準計算(10種類の所得合計)
  3. 課税所得計算(=課税標準 – 所得控除)
  4. 所得税額計算(=課税所得 × 税率)
  5. 納付税額計算(=所得税額 – 税額控除)

FP-タックス(所得税のしくみ)

所得税の算出は複数所得・複数ステップにわたるため、上記表のどこを計算しているのかを常に意識することが重要です。

【Step 1】所得計算(10種類の所得算出)

所得税の計算に当たってはまず、下記10種類の所得を理解し、それぞれの所得額を算出します。

利子所得預貯金・公社債などの利子による所得
・20.315%の源泉分離課税
配当所得株式や株式投資信託の配当・分配金による所得
・配当支払い時に20.315%が源泉徴収(確定申告により総合課税・申告分離課税が選択可)
不動産所得・土地・建物などの不動産の賃貸収入による所得
・不動産所得=総収入ー必要経費(ー青色申告特別控除額(~65万円))
事業所得事業から生じる所得
・事業所得=総収入ー必要経費(ー青色申告特別控除額(65万円))
給与所得・会社員などが勤務先から受ける給与・賞与などの所得
・給与所得=収入ー給与所得控除
・会社で年末調整を行うことで確定申告が不要
退職所得・会社員などが退職によって勤務先から受ける退職金などの所得
・退職所得=(収入ー退職所得控除)×1/2
譲渡所得・土地・建物、有価証券やゴルフ会員権などの資産の譲渡により生じる所得
・土地・建物、有価証券の譲渡は分離課税、それ以外は総合課税
・譲渡所得=総収入ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除額(50万円)
・総合課税の長期譲渡所得は1/2を他の総合課税と合計
一時所得・営利目的ではない非継続的な所得(生命保険満期返戻金、懸賞の賞金など)
・一時所得=総収入ー支出ー特別控除額(50万円)
・1/2を他の総合課税と合計
雑所得他の9つ以外の所得(老齢年金や外貨預金の為替差益など)
・(公的年金の場合)雑所得=収入ー公的年金等控除額
・(それ以外の場合)雑所得=収入ー経費
山林所得山林(所有期間5年超のもの)の売却で得られる所得
・取得後5年以内の伐採・譲渡は事業所得or雑所得となる

【Step 2】課税標準計算(10種類の所得合計)

次は、『課税標準(税額決定の算定基準となる所得の合計額)』を算出します。

前述の10種類の所得は、以下のように総合課税分離課税に分類できます。

  • 総合課税…各所得を合計した総所得を算出し税率をかける
    • 利子所得
    • 配当所得
    • 不動産所得
    • 事業所得
    • 給与所得
    • 一時所得(1/2を合計)
    • 雑所得
    • 譲渡所得(不動産・株式以外)(長期譲渡は1/2を合計)
  • 分離課税…個別に税率をかける
    • 退職所得
    • 山林所得
    • 譲渡所得(不動産・株式)

不動産所得・事業所得・山林所得・事業所得(総合課税)は、所得がマイナスとなった場合、他の所得のプラスと相殺することができます(損益通算)。

【Step 3】課税所得計算(=課税標準 – 所得控除)

課税標準から、所得控除を差し引いて『課税所得』を算出します。

所得控除とは、納税者や家族事情、社会政策などを考慮し税負担の調整のための控除が行われるもので、大きく「人的控除」と「物的控除」に分類されます。

以下が主な所得控除となります。

人的
控除
基礎控除納税者本人の控除(48万円
配偶者控除控除対象配偶者(※)の控除(~38万円
※納税者と生計を一にし、所得が48万円以下の配偶者
配偶者特別控除配偶者控除対象とならない、所得が48~133万円の配偶者の控除(~38万円
扶養控除扶養親族の控除
・一般扶養(16~19歳、23~70):38万円
・特定扶養(19~23歳):63万円
・老人扶養(70歳~):48万円
※16歳未満(年少扶養親族)は控除対象外
物的
控除
社会保険料控除本人or配偶者、親族の社会保険料支払に対する控除
医療費控除本人or配偶者、親族の医療費支払に対する控除(~200万円)
生命保険料控除生命保険の保険料に対する控除(~4万円)
地震保険料控除地震保険の保険料に対する控除(~5万円)

【Step 4】所得税額計算(=課税所得 × 税率)

課税所得金額に所得税率をかけて、『所得税額』を算出します。

それぞれの税率は下記のように定義されています。

総所得金額超過累進税率(所得が多くなるほど税率が高くなる):~45%
退職所得
譲渡所得分離・短期30%
分離・長期15%
株式等

【Step 5】納付税額計算(=所得税額 – 税額控除)

前述にて『所得税額』を算出しましたが、実際に納める納付税額は、ここから税額控除を差し引いたものとなります。

税額控除には以下のようなものがあります。

配当控除国内法人から配当を受け取った場合に一定税額を控除
(法人税との二重課税を避けるため)
外国税額控除国外で生じた所得で外国所得税が徴収される場合に一定税額を控除
(国内所得税との二重課税を避けるため)
住宅借入金等特別控除いわゆる住宅ローン控除

源泉徴収票

会社員などの給与所得者は、毎月の給与から所得税・住民税が源泉徴収されますが、年末に1年間の所得税を計算・精算します。

この年末調整の結果を記したものが『源泉徴収票』です。

ご自身が会社員であれば、自身の源泉徴収票を見て、所得税がどのように算出されているか確認してみましょう。

例えば、ご自身の源泉徴収票が以下の場合、【給与・賞与 800万円】からどのように所得税(=源泉徴収税額)が算出されているのでしょうか。

FP-タックス(所得税のしくみ②)

以下のようにこれまでの5ステップ(本事例では税額控除がないため実質4ステップ)を活用すれば、【所得税 202,500円】を算出することが可能です。

FP-タックス(所得税のしくみ③)

一見複雑な流れのように見えますが、ご自身のケースを基に確認してみると身をもって理解することができます。
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住民税

住民税』は、居住する地方自治体に納付する地方税です。

住民税額は、(一定基準以上の所得がある者に)均等に課される『均等割』と、所得に10%の税率をかけて計算する『所得割』の2つがあります。

算出手順は前述の所得税と同様ですが、所得控除額が所得税と異なっていることが特徴です。

 住民税所得税
基礎控除43万円48万円
配偶者(特別)控除~33万円~38万円
扶養控除一般扶養33万円38万円
特定扶養45万円63万円
老人扶養38万円48万円
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法人税

法人税』は、法人の所得に対して課せられる税金です。

所得税は暦年課税である一方で、法人税は事業年度で算出されるのが特徴です。

申告調整

法人の決算結果である当期純利益は『収益-費用』で算出される一方、法人税を計算する所得金額は『益金-損金』で算出されます。

会計上の収益・費用と税務上の益金・損金は一致しないため、申告調整において下記の4つの調整を行い所得金額を算出します。

 会計上税務上申告調整
益金不算入収益益金とならない当期純利益から減算
損金不算入費用損金とならない当期純利益へ加算
益金参入収益ではない益金所得金額に加算
損金参入費用ではない損金所得金額から減算

法人税額の計算

法人税額は、申告調整後の所得金額に下記の税率をかけ算出します。

資本金1億円超の法人所得金額に対し23.2%
その他の法人
(中小法人)
年800万円超の所得金額に対し
年800万円以下の所得金額に対し15%
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まとめ

今回は『タックスプランニング』について紹介しました。

FP試験では多彩なしくみや制度を学ぶため、計算方法や制度詳細にフォーカスしてしまいがちですが、しくみや制度の位置づけや全体像を把握することが重要になります。

試験勉強のフェーズにかかわらず、下記のような入門本に立ち返ってみるのもオススメです。

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