FP(ファイナンシャルプランナー)試験は、お金全般に関する試験ですが、学習においては各科目の全体像を把握することが重要となります。
今回は、我々が住む、あるいは投資目的で保有する『不動産』について概要を紹介します。
不動産
『不動産』は、宅地・土地価格や登記などの「しくみ」、さらに不動産に関する「法律」、「税金」について学びます。
以下、それぞれの項目について概要を紹介します。
不動産のしくみ
4種類の宅地
『宅地』とは、建物の敷地となっている土地、あるいは建物を建てるための土地で、以下4種類があります。
種類 | 更地 | 建付地 | 借地権 | 底地 |
特徴 | ・建物が建っていない土地 ・所有者が自由に使用できる | ・建物が建っている土地 ・建物と敷地所有者が同一 | ・建物の所有を目的とし土地を借りている権利 | ・借地権設定のある土地の所有権 |
建物所有者 | – | A | A | (借主) |
借地権者 | – | – | A | (借主) |
土地所有者 | A | A | (地主) | A |
5種類の土地価格
『土地価格』は、実際に売買を行う際の価格である『実勢価格』に加え、様々な目的に応じて公表されている4つの価格が存在します。
- 公示価格 … 一般の土地取引価格の指標
- 基準値標準価格 … 公示価格の補完
- 相続税評価額 … 相続税・贈与税計算の基礎
- 固定資産税評価額 … 固定資産税・都市計画税計算の基礎
登記
不動産を取得した際には、不動産に対する権利を第三者に対して主張(対抗力)するために不動産登記が必要です。
表題部 | 土地・建物の表示に関する記載 | 所在地・面積・構造など | |
権利部 | 土地・建物の権利に関する記載 | 甲区 | 所有権に関する事項 |
乙区 | 所有権以外(抵当権など)に関する事項 |
不動産に関する法律
- 宅地建物取引業法
- 借地借家法
- 区分所有法
- 都市計画法
- 建築基準法
宅地建物取引業法
『宅地建物取引業法』は、宅地建物の取引上での購入者の利益保護や、流通の円滑化を図る目的の法律です。
宅地建物取引業を営む『宅地建物取引士』は、住宅購入において以下の独占業務があります。
住宅購入の流れ | 宅地建物取引士の独占業務 |
購入物件の決定 | |
重要事項の説明 | 重要事項の説明 重要事項説明書への記名押印 |
買主・売主間の売買契約 | 契約書への記名押印 |
住宅ローン審査 | |
物件の引き渡し |
借地借家法
『借地借家法』は、借主を保護するために土地・建物の賃貸借におけるルールを定めた法律で、下記4つの権利があります。
普通 | 定期 | |
借地権 | ・存続期間30年以上 ・期間終了後契約更新できる | ・一定の契約期間終了後、土地を返却 |
借家権 | ・存続期間1年以上 | ・決められた期間をもって契約終了 |
建築基準法
『建築基準法』は、建築物の敷地・構造・設備および用途に関する基準を定めた法律です。
様々な制限が定められていますが、代表的な「建蔽率」および「容積率」の制限について紹介します。
建蔽率
防災上の観点から定められている、敷地面積に対する建築物の建築面積を『建蔽率』といいます。
建蔽率の限度は用途地域ごとに決められており(指定建蔽率)、土地ごとに敷地全体の何%まで建物を建てられるかが制限されています。
容積率
建蔽率に加え、建築物は『容積率(敷地面積に対する建築物の延べ面積の割合)』の制限を満たす必要があります。
容積率の限度も用途地域ごとに決められており、土地ごとに建築可能な延べ面積が制限されています。
①前面道路の幅員に法定乗率をかけた値
②その土地の指定容積率
不動産に関する税金
不動産に関する税金について、「取得時」、「所有時」、「売却時」の3つの観点でおさえましょう。
取得時
不動産取得税 | 不動産を取得した際にかかる税金 |
登録免許税 | 登記の際に納付する税金 |
印紙税 | 契約書などの文書作成時に課される税金 |
不動産取得税
住宅用家屋・土地については、税額を軽減する特例があります。
住宅の特例 | 固定資産税評価額 - 1,200万円 |
住宅用土地の特例 | 固定資産税評価額 × 1/2 |
登録免許税
住宅用家屋の登記については、税額を軽減する特例があります。
登記種別 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率 |
所有権保有登記 | 固定資産税評価額 | 0.4% | 0.15% |
所有権移転登記 | 2.0% | 0.3% | |
抵当権設定登記 | 債権金額 | 0.4% | 0.1% |
所有時
固定資産税 | 土地・家屋などの固定資産の保有に対する税金 |
都市計画税 | 都市計画事業などの費用のための税金 (市街化区域内の土地・所有者のみ対象) |
不動産の保有や、都市計画事業などの費用のため、固定資産の所有者に毎年税金が課せられます。
都市計画税 = 課税標準 × 0.3%(制限税率)
住宅用地については、税額を軽減する特例があります(住宅用地の課税標準の特例)。
小規模住宅用地 (土地のうち200㎡以下の部分) | 一般住宅用地 (土地のうち200㎡超の部分) | |
固定資産税 | 固定資産税評価額 × 1/6 | 固定資産税評価額 × 1/3 |
都市計画税 | 固定資産税評価額 × 1/3 | 固定資産税評価額 × 2/3 |
売却時
所得税 住民税 | 不動産を譲渡し、譲渡益がある場合の譲渡所得にかかる税金 |
不動産を譲渡した際、以下が譲渡取得として課税対象となります。
※取得費不明 or 譲渡収入×5%>取得費の場合、取得費は 譲渡収入×5%とみなす
不動産所得は、譲渡した年の1月1日現在までの所有期間が5年を超えるか否で税率が変わります。
所有期間 | 税率 | |
長期譲渡所得 | 5年超 | 20% (= 所得税 15% + 住民税 5%) |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 39% (= 所得税 30% + 住民税 9%) |
居住用財産を譲渡する際には、次のような2つの特例が設けられています。
特例① 居住用財産の3,000万円特別控除の特例
居住用財産を譲渡し譲渡益がある場合、譲渡所得額から最高3,000万円が控除される特例です。
特例② 居住用財産の軽減税率の特例
所有期間が10年を超える居住用財産を譲渡した場合、課税譲渡所得額(=譲渡所得額 - 特別控除)の6,000万円以下の部分に軽減税率が適用されます。
6,000万円以下の部分 | 6,000万円超の部分 | |
所得税 | 10% | 15% |
住民税 | 4% | 5% |
例えば、取得費1億円の居住用財産(所有期間10年超)を、譲渡費用500万円、譲渡収入2億円で譲渡した場合の納付税額(所得税+住民税)は以下のように算出されます。
まとめ
今回は『不動産』について紹介しました。
FP試験では多彩なしくみや制度を学ぶため、計算方法や制度詳細にフォーカスしてしまいがちですが、しくみや制度の位置づけや全体像を把握することが重要になります。
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