【FP】相続・事業承継(相続のしくみ理解と相続税の算出が最重要)

FP-相続・事業承継社会保険労務士

FP(ファイナンシャルプランナー)試験は、お金全般に関する試験ですが、学習においては各科目の全体像を把握することが重要となります。

今回は、人生の後期において必ず意識しなければいけない相続や贈与について扱う、『相続・事業承継』について概要を紹介します。

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相続・事業承継

相続・事業承継』は、主に個人の財産(遺産)の相続・贈与を扱う「相続税」や「贈与税」と、会社の相続となる「事業承継」について扱います。

FP-相続(試験範囲)

以下、それぞれの項目について概要を紹介します。

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相続人と法定相続分

相続人

死亡した人(被相続人)の財産を受け継ぐことができる人(相続人)や、その順位は民法で規定されています。

配偶者は常に相続人となりますが、それ以外の遺族は下記のように順位が決まっており、上位から相続人となります。

第1順位子 (複数いある場合は共同)
第2順位直系尊属 (第1順位の相続人がいない場合)
第3順位兄弟姉妹 (第1順位、第2順位の相続人がいない場合)

FP-相続(相続人の順位)

下記のような場合には、上記の相続人以外が財産を受け取ることもあります。

遺贈遺言書によってその人に財産を渡すこと
死因贈与生前に死亡した際の財産贈与の契約をすること
(贈与ではあるが相続税対象

法定相続分

被相続人が遺言書を残している場合、遺言書に従い相続人が財産を相続します。

遺言による相続分の指定が無い場合、定められた相続分法定相続分)に従い財産を分割します。

民法で定められた相続分は以下です。

相続人法定相続分その他相続人法定相続分
配偶者1
1/21/2
2/3直系尊属1/3
3/4兄弟姉妹1/4
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相続税

相続税のしくみ

相続税』は、相続または遺贈・死因贈与により財産を取得した個人にかかる税金で、次の4ステップで算出することができます。

  1. 課税価格計算(=遺産総額 - 非課税財産等)
  2. 課税遺産総額計算(=課税価格 - 基礎控除)
  3. 相続税総額計算(=課税遺産総額 × 税率 の総額)
  4. 納付相続税額計算(=相続税総額 × 実際相続割合)

FP-相続(相続税の算出)

 
相続税の算出は複数ステップにわたるため、上記表のどこを計算しているのかを常に意識することが重要です。

【Step 1】課税価格計算(=遺産総額 - 非課税財産等)

相続税の計算に当たってはまず、『課税価格(=正味相続財産)』を算出します。

課税価格は、以下のように被相続人の「遺産総額」から、「非課税財産」や「債務・葬式費用」を控除したものです。

課税価格 = 遺産総額 - 非課税財産 - 債務控除

遺産総額

相続税の対象となる財産には以下の3種類があります。

本来の相続財産現金・預貯金、有価証券、土地・家屋など
みなし相続財産死亡保険金・死亡退職金など
生前贈与財産相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産

非課税財産

原則、被相続人から相続した財産は相続税対象となりますが、以下については相続税の課税対象外となります。

  • 墓地・墓石・仏壇・仏具など宗教的儀礼に関わるもの
  • 死亡保険金・死亡退職金(500万円×法定相続人の数 まで)

債務控除

被相続人の債務葬式費用は、課税費用から差し引いて算出することができます(債務控除)。

【Step 2】課税遺産総額計算(=課税価格 - 基礎控除)

次に、『課税遺産総額』を算出します。

課税遺産総額は、課税価格から「遺産に係る基礎控除額」を差し引いたものです。

課税遺産総額 = 課税価格 - 遺産に係る基礎控除額

遺産に係る基礎控除額

相続税においては、遺族が過大な相続税の納付により生活に困窮することがないよう基礎控除のしくみが設けられています。

遺産に係る基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

【Step 3】相続税総額計算(=課税遺産総額 × 税率 の総額)

次に、課税遺産相続を法定相続人の法定相続分で按分し各相続人の相続税を算出、合計し『相続税総額』を算出します。

各相続人の相続税額 = 相続人の法定相続分 × 税率

税率は、下記表のように課税所得金額に応じて算出されます。

課税所得金額税率控除額
~ 1,000万円10%
1,000万円 ~ 3,000万円15%50万円
3,000万円 ~ 5,000万円20%200万円
5,000万円 ~ 1億円30%700万円
1億円 ~ 2億円40%1,700万円
2億円 ~ 3億円45%2,700万円
3億円 ~ 6億円50%4,200万円
6億円 ~55%7,200万円

【Step 4】納付相続税額計算(=相続税総額 × 実際相続割合)

最後に、相続税総額を実際の相続割合で按分し相続人ごとが納付する相続税を算出します。

相続人によっては、納付相続税額の「減額」や「増額」が生じます。

相続税の減額

被相続人の配偶者は、被相続人と共に財産を形成したという考え方のもと優遇措置があり、配偶者の取得財産のうち、1億6,000万円を最低保証、超過分も法定相続分まで相続税がかかりません

相続税の増額

被相続人の配偶者や1親等の血族以外の相続人(例:祖父母、兄弟姉妹)に対しては、納付相続税額が2割加算されます。

 

相続税の算出は一見複雑な流れのように見えますが、ご自身のケースを基に確認してみると身をもって理解することができます。
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贈与税

贈与税のしくみ

贈与税』は、個人からの贈与で財産を取得した個人に課される税です。

扶養義務者からの生活費や学費などは、性質上贈与税が課されません。

贈与税は、下記の数式で算出、税率は課税価格に応じて算出されます。

贈与税額 = (課税価格 - 110万円) × 税率

課税価格(基礎控除後)税率控除額
~ 200万円10%
200万円 ~ 300万円15%10万円
300万円 ~ 400万円20%25万円
400万円 ~ 600万円30%65万円

20歳以上の人が直系尊属から贈与を受けた場合、特例税率が適用され贈与税が軽減されます。

課税価格(基礎控除後)税率控除額
~ 200万円10%
200万円 ~ 400万円15%10万円
400万円 ~ 600万円20%30万円
600万円 ~ 1,000万円30%90万円

贈与税の非課税制度

贈与税においては、『贈与税の配偶者控除』と『相続時精算課税制度』、2つの非課税制度をおさえておきましょう。

贈与税の配偶者控除

夫婦の財産は共につくり上げたものという考えから、夫婦間の、特に居住用財産の贈与について『贈与税の配偶者控除』の適用が受けられます。

具体的には、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産(または購入するための金銭)の贈与において、2,000万円まで控除されます(基礎控除と合計し2,110万円まで非課税)。

相続時精算課税制度

親世代の資産を早めに子ども世代に移転するため、生前贈与について累計2,500万円まで非課税贈与ができる『相続時精算課税制度』があります。

具体的には、贈与者が満60歳以上の父母・祖父母、受贈者が満20歳以上の子である相続人・孫の贈与において、一般の贈与相続時精算課税制度から本制度を選択すると、合計2,500万円になるまで制限なく贈与税がかかりません(2,500万円を超えると超過分は20%の贈与税)。

ただし本制度は、贈与者が死亡した際に贈与を受けた財産を相続税として計算するものであり、相続税対策とはならない点注意が必要です。
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まとめ

今回は『相続・事業承継』について紹介しました。

FP試験では多彩なしくみや制度を学ぶため、計算方法や制度詳細にフォーカスしてしまいがちですが、しくみや制度の位置づけや全体像を把握することが重要になります。

試験勉強のフェーズにかかわらず、下記のような入門本に立ち返ってみるのもオススメです。

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