社会保険労務士試験は、労働や社会保険に関する法律からなる試験ですが、学習においては法律の全体像を把握することが重要となります。
今回は、労働法である『労働保険徴収法』について概要を紹介します。
『労働保険徴収法』は、労働保険の保険料の徴収等について定めた法律です。
労働保険徴収法とは
労働保険徴収法とは、労働保険たる、「労災保険」および「雇用保険」の適用事務や保険料の徴収事務を一本化して行うための法律です。
労災保険や雇用保険については以下に詳細をまとめていますので、合わせてお読みください。
徴収法の役割は以下の3点で、労働保険事業の効率的な運営を目指しています。
- 労働保険の保険関係の成立および消滅
- 労働保険料の納付手続
- 労働保険事務組合等
以下、3点の役割について詳細を説明します。
労働保険の保険関係の成立および消滅
保険関係の成立
保険関係の成立は、適用事業や暫定任意適用事業において、以下に法律上当然に成立します。
適用事業 | 事業が開始された日 |
暫定任意適用事業 | 適用事業に該当するに至った日 |
保険関係の消滅
保険関係の消滅は、適用事業か暫定任意適用事業を問わず、以下に法律上当然に消滅します。
継続事業 | 廃止された日の翌日 |
有期事業 | 終了した日の翌日 |
労働保険料の納付手続
労働保険料の種類
労働保険料は大きく以下の4つに分類されます。
- 一般保険料 … 通常の労働保険料
- 特別加入保険料 … 労災保険に特別加入した者に対する労災保険の保険料
- 印紙保険料 … 雇用保険の日雇労働被保険者がいる場合に収める雇用保険の保険料
- 特例納付保険料 … 雇用保険の保険料の徴収時効を経過した後に収める雇用保険の保険料
一般保険料は、保険関係が成立している事業が必ず納めなければいけない保険料です。
一方、一般保険料以外の3つは該当する者がいる場合のみ納める保険料となります。
一般保険料額
一般保険料の額は、事業主が労働者に支払う賃金総額に一般保険料率を乗じて算出します。
一方、雇用保険料は事業の種類により、9/1000 (一般の事業)~ 12/1000(建設等の事業)の間で定められています。
労働保険料の申告と納付
労働保険料は、年度はじめに概算で保険料を納め(概算保険料)、翌年度に確定額を精算する(確定保険料)2段階での納付を行います。
継続事業
継続事業では、事業開始年度のはじめに概算で申告納付し、翌年度に確定額を申告、概算額と各定額の過不足を精算します。
概算保険料は、原則、年度に使用するすべての労働者に支払う賃金総額の見込額に一般保険料率を乗じて算定します。
その年度に実際に支払った賃金総額に基づいて計算した額が確定保険料となり、保険料が不足していれば不足額を納付、超過していれば還付または充当されます。
有期事業
有期事業では、保険関係が成立した日の翌日から起算し20日以内に労災保険料を概算で納付し、保険関係が消滅した日から起算して50日以内に確定保険料を精算します。
概算保険料は、事業の全期間に使用するすべての労働者に支払う賃金総額の見込額に労災保険料率を乗じて算定します。
事業の開始から終了までの全期間に実際に支払った賃金総額に基づいて計算した額が確定保険料となり、保険料が不足していれば不足額を納付、超過していれば還付または充当されます。
労災保険のメリット制
労災保険のメリット制は、一定年度の業務災害により支給した保険給付額と、支払った保険料額との収支に応じて労災保険率を上げ下げする制度です。
労働保険事務組合
労働保険事務組合は、事業主の代理人として労働保険事務を処理する制度です。
事業の種類によって、委託することができる事業規模が以下のように定められています。
金融業・保険業・不動産業・小売業 | 労働者数常時 50人以下 |
卸売業・サービス業 | 労働者数常時100人以下 |
上記以外の事業 | 労働者数常時300人以下 |
まとめ
今回は『労働保険徴収法』について紹介しました。
社労士は法律の試験であるため、制度詳細や条文にフォーカスしてしまいがちですが、法律の位置づけや全体像を把握することが重要になります。
長い社労士学習においては、試験勉強のフェーズにかかわらず、下記の入門本に立ち返ってみるのもオススメです。
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