【診断士2次試験・事例Ⅰ】「組織(人事)は戦略に従う」を意識せよ

診断士2次試験事例I組織・人事中小企業診断士

診断士2次試験の事例Iは組織・人事戦略を問われる事例です。

他事例と比較すると難易度が高く、苦手意識を持っている方が多いのではないでしょうか。

だからこそ事例Ⅰを得意にすることができれば確実に他の受験者と差をつけることができます。

本記事では、事例Iに取り組む上でおさえておくべきポイントを紹介します。

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事例Ⅰの概要

事例Ⅰは「組織・人事を中心とした経営の戦略および管理に関する事例」です。

「製造業」、「販売業」など顧客の業種がバラバラであることが事例Ⅰの特徴です。

診断士2次試験4事例のうち、最も難易度が高いと考え、苦手意識を持っている方が多いのが事例Ⅰではないでしょうか。
理由は様々あるかと思いますが、事例自体の多様性と、組織・人事観点への不慣れがあると考えます。

事例Ⅰで問われるのは、大きく「事業戦略」および、それに伴う「組織戦略」、「人事戦略」となりますが、チャンドラーの『組織人事)は戦略に従う』が事例Ⅰの最重要ポイントはと言っても過言ではありません。

事業戦略と組織・人事戦略

事業戦略」と、それに伴う「組織変更」、「人事戦略」はそれぞれが密接に結びついているものであり独立した戦略ではありません。

当然、事業戦略が変われば組織人事制度も適合していく必要がありますが、いざ試験となるとこれらを独立して考えてしまう方が多いようです。

常に『組織人事)は戦略に従う』を意識しながら望むのが事例Ⅰの攻略法です。
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事例Ⅰの攻略フレームワーク(事業戦略)

事例Ⅰにおける『事業戦略』では、「新規事業」、「新ビジネスモデル」、「M&A」など、『事業拡大』がテーマとなります。

形式はそれぞれですが、いずれも共通して、事業拡大を通して下記のようなメリット(特にシナジー効果)が期待できるかがポイントとなります。

  • シナジー効果
  • リスク分散(ポートフォリオ)
  • 組織スラックの有効活用
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事例Ⅰの攻略フレームワーク(組織戦略)

組織戦略」で考慮すべきは、「組織構造」と「組織行動」に分類できます。

組織構造

環境変化により経営・事業戦略が変わると、それに適合する「組織構造」が必要となります。

事例Ⅰにおいても同様、経営・事業戦略の変化に伴い、『組織構造の変更』を考慮する必要があります。

組織構造を考慮する際、特に留意すべきは以下の2点です。

  • 役割分担と責任の所在明確化(専門化の原則)
  • 現場への権限委譲(例外の原則)
これらは事例Iの解答でそのまま使えるキーワードですので、覚えておきましょう。

役割分担と責任の所在明確化(専門化の原則)

企業の事業拡大や組織拡大に伴って、「分業による専門化」が求められます。

この際、専門化と共に『役割分担と責任の所在明確化』を行うことに留意しなければいけません。

現場への権限委譲(例外の原則)

企業の事業拡大や組織拡大に伴って、分業による専門化とともに、「経営者の非定型業務への集中」が求められます。

『非定型業務』とは、全社的・戦略的な意思決定などの、定型で発生しない業務を指します。

現場への権限委譲』は、事例Iにおける最重要キーワードともいえますが、「経営者」にとっては非定型業務への集中ができる一方、「委譲される従業員」にとってもモチベーション向上、意思決定の迅速化など、両面のメリットおさえておきましょう。

組織行動

組織行動』とは、組織に参加するメンバーの行動や心理に着目した領域です。

一般的に「組織」というと『組織構造』がイメージされますが、構造とセットになる『組織行動』が、特に中小企業においては組織構造と同等以上に重要になります。

この領域で重要となるのは「モチベーション」と「組織文化」です。

モチベーション

「モチベーション」は、組織に属するメンバーのやる気や士気といった動機付けです。

モチベーションに問題がある場合、原因は大きく下記の2つに分類されます。

  • 現行の事業・組織・人事戦略が各従業員に適合していない
  • 現行の事業・組織・人事戦略は適合しているが、プロセスに各従業員の納得性がない

現行の事業・組織・人事戦略が各従業員に適合していない場合は、与件文を洗い出し、適切な組織戦略や人事戦略へ変更する、という方向性になります。

一方、プロセスに各従業員の納得性がない場合は、以下のように従業員の組織参画を促進することを考えましょう。

  • 意思決定の場に従業員参画させる
  • 制度導入に際し従業員に導入の意義などを説明する

組織文化

「組織文化」は、組織に属するメンバー間で共有された価値観や習慣です。

強い現状維持志向を持つ組織においては、『経営者のリーダーシップによる組織文化の醸成』が大きなテーマになります。

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事例Ⅰの攻略フレームワーク(人事戦略)

人事戦略」は、「組織戦略」と一体になる戦略で、「採用・配置」、「能力開発」、「評価」、「報酬」のサブシステムで構成されいます。

4つのサブシステムは独立したものではなく、評価」を中心としお互いが連動した、人的資源を対象とした戦略なります。

  • 採用・配置…従業員にどのような仕事を与えるか
  • 能力開発…従業員の能力をどのように開発するか
  • 評価…従業員をどのような観点で評価するか
  • 報酬…成果を出した従業員にどう報いるか

人事戦略

環境変化により経営・事業戦略が変われば組織が変わるのに合わせて、人的資源のあり方も変わります。

そのため、事例Ⅰの与件文上で、一見人事戦略と無関係な(経営・事業戦略、組織戦略の)変化があった場合においても、これらの4つの観点から人事戦略の適合について検討する、というのがポイントとなります。

採用・配置&能力開発

事例Ⅰにおいては、「採用・配置」と「能力開発」は共に、『今後の事業戦略に適合した人的資源の確保・育成(ジョブローテーション含む)』という観点で問われます。

重要なポイントは、「今後の事業展開に必要な人材像を明確にした上で、適合する人材を計画的に採用・配置」することです。

人事戦略の中でも特に「採用・配置」と「能力開発」は資源獲得に時間を要することが多いため、事例Ⅰでこれらの戦略を解答に盛り込む場合、長期的に取り組む旨を意識した記述にする必要があります。

評価

人事制度の4つのサブシステムの核となるのが「評価」です。

事例Ⅰにおいて、現行の評価制度が適切に運用されていないことが多いです。

解答の方針としては、「成果を適切に評価する評価制度の導入」です。

留意点として、ひとことで『成果主義』といっても、適切な評価を行う仕組みを組み込むことが必須です。

例えば、単純に業績=売上と定義した場合、担当顧客により難易度が異なる、個人業績に専念し若手の育成が疎かになる、などの問題が生じます。
与件文から現行制度の問題点を洗い出し、成果主義の導入における仕組みへ組み込みましょう。

報酬

事例Ⅰで「報酬」について切り込む場合は、以下が大きな2つの方向性となります。

  1. 成果主義賃金制度
  2. 業績連動給

成果主義賃金制度』は、今後の事業展開に合わせた成果主義の評価制度を導入した場合に行う、賃金制度の評価制度連動です。

業績連動給』は、経営の見通し不透明性に伴う体質改善、具体的には「固定費の変動費化」です。特に業績悪化時には下記の施策が挙げられます。

  • 役員賞与のカット
  • 人件費の業績連動化
  • 非正規従業員の活用
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まとめ

本記事では、診断士2次試験の事例Iについて、おさえておくべきポイントを紹介しました。

事例Ⅰは問題の多様性もあるため過去問だけではなく広く組織・人事の観点をおさえておく必要があります。

チャンドラーの「組織は戦略に従う」、中小企業診断士を学習しているタイミングだからこそ、読んでみてはいかがでしょうか。

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