診断士2次試験の事例Ⅲは生産・技術戦略を問われる事例です。
事例Ⅲは他事例と比較するとイメージがつきにくい方が多いため取り組みにくいイメージがありますが、試験で特定の生産・技術知識を問われることはありません。
事例Ⅲで問題となりやすい項目や、中小企業がとるべき戦略をおさえておくことで十分合格に辿り着けます。
本記事では、事例IIIに取り組む上でおさえておくべきポイントを紹介します。
事例Ⅲの概要
事例Ⅲは「生産・技術を中心とした経営の戦略および管理に関する事例」です。
「製造業」が顧客となりますが、そのなかでも「BtoB(生産財)を受注生産で製造する製造業」がターゲットとなります。
その理由は、事例Ⅲの主要テーマが「生産管理」であるためです。
なお、診断士2次試験事例Ⅲにおいて大きく問われるのは『経営戦略』と『生産管理』の2点です。
特に『生産管理』観点での出題が、その名の通り事例Ⅲの特徴となります。
事例Ⅲの攻略フレームワーク(経営戦略)
事例Ⅲでは、第1問と最終問題で『経営戦略』観点での出題傾向があります。
特に、第1問では企業のSWOT分析、最終問題では「海外進出」や「環境進出」など、今後の方向性を問われます。
SWOT分析
事例Ⅲでは第1問にSWOT分析の出題傾向があります。
中小企業向けのSWOT分析活用については、以下にまとめていますので合わせてお読みください。
事例Ⅲの特徴としては、特に業界における『強み』を中心に問われることです。
理由は、第2問以降において、「業界における『弱み』」の問題点や、「外部環境の変化」が設問として与えられたうえで、改善策を助言する出題となるためです。
今後の経営戦略(海外進出・環境対応)
事例Ⅲの最終問題として今後の経営戦略の方向性が問われることがあります。
特に「海外進出」、次点で「環境対応」が問われる傾向があります。
海外進出
海外進出のパターンには大きく以下2点があります。
- 自社トリガー(販路開拓、製造コスト削減)
- 他社トリガー(親会社や取引先の海外進出に伴う対応)
いずれの場合も、海外特有の観点が問われることはないため、海外進出における知識は不要です。
テーマとなるのは『「外部環境の変化」への対応』となり、後述の「営業と生産の連携」や「内外製判断」の問題に置き換えることができます。
環境対応
環境対応は、政府規制や関係者要望をトリガーしたものになりますが、前述の通り対応する前提です。
単に環境リスクへ対応するだけではなく、環境経営をビジネスチャンスとして捉えることを意識しましょう。
事例Ⅲの攻略フレームワーク(生産管理)
事例Ⅲでは、第2問から最終問題前まで『生産管理』観点での出題傾向があります。
生産管理はさらに、『営業面』と『生産面』、それをつなぐ『情報システム』に分類できます。
それぞれについて頻出項目があるため、以下にて紹介させていただきます。
営業面の改善
営業面では、「取引先の集中と分散」、「受注プロセスの見直し」が主テーマとなります。
取引先の分散による経営リスク低減
事例Ⅲでは、特定顧客へ取引を依存しているケースがみられます。
メリットとして、特定顧客との取引による安定的な受注により、経営資源を生産・製造に集中できますが、一方でデメリットとして、顧客業績に自社業績が左右されやすいため経営リスクが高まることが挙げられます。
取引構造の経営環境の変化が激しい昨今においては、「経営リスクを下げるための取引先の新規開拓」が改善の方向性となります。
受注プロセス見直しによる受注リードタイム短縮
前述の通り事例Ⅲ顧客は受注生産のため、受注して初めて生産着手できますが、営業部門が客先や設計部門と何度もやり取りするムダが発生し、受注までの期間が長期化するケースがみられます。
このようなケースでは、与件文に記載している問題点をベースに解決していく方向性となります。
生産面の改善
生産プロセスは大きく「設計」、「調達」、「作業」の3フェーズに分類できます。
それぞれのフェーズについて頻出となる以下の項目を紹介します。
- 設計:設計計画の短サイクル化
- 調達:内製ありきでの内外製判断
- 作業:標準品化による小ロット生産
設計:生産計画の短サイクル化
事例Ⅲでは、計画作成・修正が一カ月前に締め切られるなど、『生産計画の柔軟性』に問題があることが多いです。
この場合、「生産計画の短サイクル化」が基本路線となります。
生産計画の短サイクル化の実現にあたっては、データベースなどの生産情報システムを活用した「営業と生産の連携強化」が必要であることも合わせておさえておきましょう。
調達:内製ありきでの内外製判断
事例Ⅲでは、生産を「内製」にするか、「外製」にするかの判断を問われることが多いです。
この場合、基本路線は「内製」です。
理由は「外製」を利用することで、内製では発生しない、交渉やQCDコントロールが発生するためです。
そのうえで、下記のような「内製」で対応できない理由がある場合に、はじめて「外製」の選定を検討するようにしましょう。
- 稼働率超過により自社でカバーできない
- 専門技術が必要となるため現行の自社設備・技術で対応できない
- 事業の不確実性に伴うリスクが高い
翻って、事例Ⅲ事例企業が既に「外製」している場合は、外注管理に問題点があると考えながら問題に取り組むとよいでしょう。
作業:標準品化による小ロット生産
事例Ⅲでは、受注案件ごとに生産を行う『個別生産』を行っているケース、次いで『ロット生産』を行っているケースが多いです。
理由は、昨今加速化する「顧客ニーズの多様化」への対応、および「QCD」への対応の両立です。
情報システム
事例Ⅲにおいて「情報システム」の導入がテーマになることがあります。
情報システムの知識自体が問われることはなく、システムの導入により生産管理におけるQCDを向上させる(=事例Ⅲ企業の問題を解決する)ことが目標となります。
- データベースで生産情報を一元管理し、
- ネットワークで本社(営業)と工場(生産)をつなぐことによりQCDを向上させる
特に前述の、「受注プロセス見直しによる受注リードタイム短縮」や「生産計画の短サイクル化」が情報システムの導入により実現できる施策となることを合わせておさえておきましょう。
まとめ
本記事では、診断士2次試験の事例IIIについて、おさえておくべきポイントを紹介しました。
事例IIIは過去問を徹底的にやりこむことで合格ラインに届くことのできる事例ですが、『生産管理』をより深く学びたい方は以下の本をオススメします。
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