幅広い心理学のテーマの中で、『犯罪・非行心理学』は、心理学の知見を犯罪や犯罪者に応用する学問です。
本記事では、この「犯罪・非行心理学」を構成するそれぞれの領域について紹介します。
犯罪・非行
「犯罪・非行」は、心理学の知見を犯罪や犯罪者に応用する学問で、下記の4つのテーマから構成されます。
- 犯罪現象
- 犯罪原因
- 犯罪捜査と防犯
- 裁判と更生
以下、それぞれの領域における主なポイントを紹介します。
犯罪現象
犯罪統計
毎年発刊される警察白書(警察庁)や犯罪白書(法務省)にて犯罪情勢の把握を行うことができます。
犯罪白書において、国内の認知件数は2002年にピークを迎えた後減少に転じています。
また、検挙率についても2001年に戦後最低を記録したものの、その後改善され、最近では30%台後半まで改善しました。
犯罪原因
犯罪の個人的要因
犯罪者の研究は、「個人的要因」を分析する犯罪心理学と、「社会的要因」を分析する犯罪心理学、2つの領域で進められてきました。
個人的要因に関する研究はイタリアのロンブローゾによって行われました。
ロンブローゾは、生まれながらにして犯罪者となるべく運命づけられた人がいるという『生来性犯罪者説』を提唱していましたが、多くの批判を浴びました。
一方、社会学者のデュルケームは、犯罪は絶対的な意味での悪ではなく、ある社会において悪と見なされるにすぎず、社会規範や規則は、社会構造の変動に伴い変化する、と提唱しています。
犯罪の社会的要因
犯罪の社会的要因はストレスです。
もう一つの社会的要因である、反社会的文化との接触として、下記のような理論が挙げられました。
- 分化的接触理論 … 個人が犯罪的文化を持つ集団に接触する度合いや頻度に注目した理論
- 非行下位文化理論 … 個人が反社会的集団に関与する心理社会過程の分析
- 分化的機会構造理論 … 合法的集団は、個人が社会的に価値づけられた目標の達成を支援する機能を持つという理論
犯罪の人格要因
犯罪者には、特徴的な人格要因が見られるといわれています。
ビッグ・ファイブ(FFM)研究では、犯罪者は「協調性」と「勤勉性」が低得点であることを見出しています。
また、精神医学的診断の試みにおいては、DSM-5で記載されるパーソナリティ障害の中でも、特に『反社会性パーソナリティ障害』が、犯罪との関連が最も強いと言われていますが、他にも『猜疑性パーソナリティ障害』にも強い傾向がみられています。
犯罪の統制理論
犯罪心理学の多くの理論と異なり、多くの人が犯罪を犯さず、遵法的生活を送っていることに焦点を当てた『統制理論』の考え方があります。
コントロール要因には、個人の内側にある『社会的絆要因』と、個人の外側にある『環境的統制要因(環境心理学)』があります。
- 社会的絆要因…「愛着」、「コミットメント」、「インボルブメント」、「規範信念」
- 環境的統制要因 …環境要因に焦点を当てて防犯の問題を考えるアプローチ
『環境的統制要因(環境心理学)』で注目されている理論として、「割れ窓理論」があります。
「割れ窓理論」とは、一枚の割れた窓が放置されることにより、環境が悪化、住民が愛着を失い、犯罪が誘発されるという犯罪の発展的進行です。
犯罪捜査と防犯
ポリグラフ検査
ポリグラフ検査は、いわゆる「ウソ発見器」として知られている装置による検査で、生理的な指標を記録するための装置です。
用いられる指標は「呼吸波」、「脈波」、「皮膚電気活動」などの末梢神経系の指標が一般的です。
ポリグラフ検査には大きく2種類があります。
- コントロール質問法 … 米国で用いられており、正確性は高くない
- 犯行知識検査 … 日本の捜査実務で用いられており、正確性が高い
裁判と更生
少年司法の流れ
少年法において、『非行少年』について下記の3種類を定めています。
- 犯罪少年 … 14歳以上20歳未満で、罪を犯した少年
- 触法少年… 14歳未満で法に触れる行為をした少年
- 虞犯少年… 罪を犯すおそれのある少年
少年院
少年院の主たる業務は、家庭裁判所から保護処分として送致された少年に対し「矯正教育」を行うことです。
下記の4種類の少年院が設置されています。
- 第一種少年院 … 心身に著しい障害が無い12歳以上23歳未満の者
- 第二種少年院 … 心身に著しい障害が無い、犯罪傾向が進んだ16歳以上23歳未満の者
- 第三種少年院 … 心身に著しい障害がある12歳以上26歳未満の者
- 第四種少年院 … 刑の執行を受ける者
まとめ
本記事では、心理学の知見を犯罪や犯罪者に応用した『犯罪・非行心理学』のエッセンスについてまとめてみました。
興味を持たれた方は、書籍などでさらに学ばれることをオススメします。
以下の記事にて、心理学検定について詳しくまとめていますので、ご興味あれば合わせてお読みください。
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