幅広い心理学のテーマの中で、『原理・研究法・歴史』は、心理学という学問の核に当たる部分を学ぶ領域です。
本記事では、この「原理・研究法・歴史」を構成するそれぞれの領域について紹介します。
原理・研究法・歴史
本テーマでは、心理学という学問の核に当たる部分であり、心を研究するための大きな枠組みやルール「原理」や、見えないものを明らかにする様々なやり方「研究法」、そして多くの研究者が知恵を絞ってきた心理学の「歴史」を扱います。
- 原理・研究法
- 歴史
以下、それぞれの領域における主なポイントを紹介します。
原理・研究法
心理学の科学的方法論
心理学は、「自然科学」と「精神科学」両方の側面をもつ科学で、その原理や目的をおさえる必要があります。
分類 | 原理 | 目的 | |
自然科学 | 法則定立的 | 一般的な法則を見いだす | 説明 |
精神科学 | 個性記述的 | 特殊な現象を理解する | 理解 |
心理学の研究法
心理学における研究は、以下のような研究法によりデータ収集をするところから始まります。
実験的研究 | 実験法 | 独立変数を操作し従属変数の変化を分析する方法、 条件を統制して因果関係を確立することが重要 |
相関的研究 | 調査法 | 質問紙を用いた調査が代表的 |
観察法 | 対象の行動を観察することにより行動を理解 | |
検査法 | 心理学的検査(知的能力に関する検査や、パーソナリティに関する検査)を用いて特性や状態を測定 | |
面接法 | 調査や臨床目的で面接を行う方法、面接者バイアスの影響が大きい |
信頼性と妥当性
心理学的測定において求められる条件には、「信頼性」と「妥当性」の2つの基準があります。
再検査法、平行検査法、折半法といった方法で信頼性係数を高めます。
以下のような観点から分類されます。
- 内容的妥当性 … 尺度の検査項目の範囲や尺度の名称などが妥当であると感じられる程度
- 基準関連妥当性 … ある測定がそれと関連する他の基準による測定結果とどの程度対応しているか
- 構成概念妥当性 … 研究にあたり意図した概念的な変数を適切に測定しているか
歴史
心理学の前史
哲学
現在の心理学には哲学的な枠組みの影響が残っていますが、これは17世紀から18世紀にかけて論じられた「理性主義」と「経験主義」の対立構図によるものです。
理性主義 | デカルトなどフランス・ドイツの哲学者を中心とした、 人間は生得的にある種の観点があるという考え |
経験主義 | ロックなどイギリスの学者を中心とした、 私たちが経験によって観念を作り上げるという立場 |
「理性主義」と「経験主義」の延長線上には、生得説と経験説の問題(「氏か育ちか」論争)があります。
生理学
19世紀に入ると、個々の感覚と関係する神経の特徴は個別に研究すべきものであるという『特殊神経エネルギー説』がミュラーによって唱えられ、生理学者の間で視覚や聴覚の研究が盛んになり、中でもヘルムホルツは、心理学と関連のある多くの研究を残しました。
- 視覚 …三原色説(網膜の中に赤・緑・青の波長に反応する神経細胞が存在し、それぞれの感覚神経を通って大脳で色として体験)
- 聴覚 … 共鳴説(多数の神経線維の長短が反応する音の高低の違いに対応)
なお、ミュラー(師)とヘルムホルツ(弟子)の間には大きな見解の相違がありました。
ミュラー | 生気論 | 生命現象はすべて物理化学的過程に還元できるものではない |
ヘルムホルツ | 機械論 | 身体の生理学的変化を含む生命現象を物理化学的過程として理解 |
ドイツ心理学・アメリカ心理学の展開
ドイツ心理学
1870年代になり、それまでの哲学的な心理学から、自然科学心理学として、ヴントによる『実験心理学(生理学的心理学)』や『民族心理学』が登場しました。
実験心理学 | 言語的教示が理解できる健康な成人向け |
民族心理学 | 子どもや動物など、それ以外の対象向け |
アメリカ心理学
19世紀後半の米国において、ヴント以降のドイツ心理学は「新心理学」と呼ばれ、ジェームズは新しい心理学のテキストとして『心理学原理』を完成させました。
アメリカ心理学における学派はティチナーの区分によるところが大きく、意識の構造に関心を寄せた「構成心理学」と、習慣・注意・記憶などの現象を扱う「機能心理学」という2つの構造に分類できます。
機能心理学から、ワトソンは心理学を行動から研究する姿勢を前面に出し、『行動主義』と名付け、1930年代の次世代の行動主義者(新行動主義)にも大きく影響を与えました。
行動主義 | ワトソン | 刺激と反応の結びつき(S-R) |
新行動主義 | トールマン | 目的的行動 |
ハル | 動因低減説 | |
ガスリー | (トールマン・ハルの理論を複雑とし)近接性の法則で説明 | |
スキナー | 強化随伴性、オペラント条件づけ |
日本の心理学史
日本の心理学史においては、以下の4名が大きな流れを生み出したと言えます。
西 周 | はじめて『心理学』という用語を翻訳し用いた |
元良 勇次郎 | 日本で最初の本格的な心理学者(東京帝国大学の教員) |
福来 友吉 | 変態心理学の第一人者だが、問題となり大学を辞職 |
松本 亦太郎 | 日本心理学会の初代会長 |
まとめ
本記事では、心理学という学問の核に当たる部分を学ぶ『原理・研究法・歴史』のエッセンスについてまとめてみました。
興味を持たれた方は、書籍などでさらに学ばれることをオススメします。
以下の記事にて、心理学検定について詳しくまとめていますので、ご興味あれば合わせてお読みください。

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