【診断士2次試験・事例Ⅱ】4ステップのマーケティング戦略で攻略

中小企業診断士

診断士2次試験の事例Ⅱはマーケティング戦略を問われる事例です。

事例Ⅱは他事例と比較するとイメージがつきやすいため取り組みやすいものの、実際の得点に繋がらない方も少なくないと思います。

本記事では、事例IIに取り組む上でおさえておくべきポイントを紹介します。

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事例Ⅱの概要

事例Ⅱは「マーケティング・流通を中心とした経営の戦略および管理に関する事例」です。

「小売業」や「サービス業」が顧客となりますが、扱う製品が「有形財(モノ)」と「無形財(サービス)」という違いはあるものの、とるべき戦略の方向性は同じ、『本格化志向・関係性志向により競合と差別化』です。

冒頭で紹介した、「実際の得点に繋がらない」理由は、逆説的ですが「イメージがつきやすい」ことが一因です。

与件に記載が無い一般論やアイディアで回答してしまいがちですが、2次試験では「フレームワークを適用して与件ベースで回答」することが必須です。
思い当たる節がある方は、下記の記事を合わせてお読みください。

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事例Ⅱの攻略フレームワーク(マーケティング・マネジメント・プロセス)

診断士2次試験事例Ⅱに取り組む上で、となるのは、コトラーが提唱した「マーケテング・マネジメント・プロセス」というマーケティング戦略の実践プロセスです。

マーケテング・マネジメント・プロセスでは以下の流れを定義しています。

  1. 市場機会の分析(SWOT分析)
  2. 標的市場の選定(STP分析)
  3. マーケティング・ミックス戦略の開発(4P分析)
  4. マーケティング活動の管理
特に、STP分析を活用した「標的市場の選定」、および4P分析を活用した「マーケティング・ミックス戦略の開発」を通した、「誰に・何を・どうやって売るのか」の明確化が事例Ⅱの主軸となります。

市場機会の分析(SWOT分析)

市場機会の分析では、「SWOT分析」のフレームワークが使えます。

中小企業向けのSWOT分析活用については、以下にまとめていますので合わせてお読みください。

事例Ⅱ向け独自の考え方としては、「3C分析」のフレームワークを用い、外部環境を「競合(Competitor)」と「市場(Customer)」の観点に分ける考え方もあります。

標的市場の選定(STP分析)

標的市場の選定では、「STP分析」のフレームワークが使えます。

STP分析は、以下の3プロセスを通した、市場全体におけるターゲットおよびポジションの明確化です。

  1. 市場細分化(Segmentation)
  2. 市場ターゲティング(Targeting)
  3. 市場ポジショニング(Positioning)

中小企業向けのSTP分析で最も重要な考え方は以下です。

特定市場に集中(ターゲティング)し、競合と差別化(ポジショニング)

この考え方は事例Ⅱの設問解答において常に意識しましょう。

マーケティング・ミックス戦略の開発(4P分析)

前述のように、以下の「4P分析」を活用した「マーケティング・ミックス戦略の開発」が事例Ⅱの主軸となります。

  1. 製品戦略(Product)
  2. 価格戦略(Price)
  3. チャネル戦略(Place)
  4. プロモーション戦略(Promotion)

その中でも重要となるのは、「製品戦略(Product)」、次いで「チャネル戦略(Place)」です。

マーケティング・ミックス戦略の開発(製品戦略)

製品戦略(Product)」は4Pの中でも最も重要な戦略となります。

製品戦略では、事例Ⅱで出題される「製品」の性質をおさえた上で、どうやって「差別化」を行うかがポイントとなります。

「製品」の分類(有形財(モノ)と無形財(サービス))

「製品」は大きく「有形財(モノ)」と「無形財(サービス)」分類できます。

また、有形財・無形財はそれぞれ「BtoC(消費者向け)」「BtoB(産業向け)」に分類されますが、事例Ⅱでは「BtoC(消費者向け)」が問われるのが特徴です。

無形財(サービス)』においては、「本質的サービス」と「付随的サービス」のフレームワークが重要です。

  1. 本質的サービス…核となるサービスそのもの
  2. 付随的サービス…本質的サービスを補完するもの

例えば、『温泉』を例にとってみると、温泉そのものや食事が「本質的サービス」となる一方、温泉と駅間の送迎サービスや季節ごとのイベントなどが「付随的サービス」といえます。

「新しいサービスのアイディア」を問われた際、単にサービスを羅列するだけでは思いつき・ブレーンストーミング感がありますが、この切り口を活用することで網羅性が説明できます。
事例Ⅱにおける、製品戦略の本質は「本質的サービス」の高付加価値化と「付随的サービス」の多様化による「差別化」にありますのでおさえておきましょう。

プロダクト・ミックス

プロダクト・ミックスとは、製品ライン(品揃えの)と製品アイテム(品揃えの深さ)の組み合わせです。

事例Ⅱのような中小企業のプロダクト・ミックスは、『製品ラインを集中し、製品アイテムを深める』戦略をとります。

製品ラインを集中するということは、同時に今の(ターゲット外の)製品ラインを縮小する、ということも重要なポイントです。(中小企業でありリソースは限られているため)

ブランド戦略

ブランド戦略においては「既存」・「新規」の製品カテゴリー軸で、「既存」・「新規」のブランド名を活用する4つに分類されます。

事例Ⅱのような中小企業のブランド戦略は、『「既存」・「新規」の製品カテゴリー軸・ブランド名を活かす』ライン拡張による差別化戦略をとります。

ライン拡張とは、既に成功したブランド名を流用し、既存製品カテゴリーに付加価値を加えた新製品を導入することで、既存製品・ブランドとの差別化を行う戦略です(例:○○プレミアム)。

マーケティング・ミックス戦略の開発(価格戦略)

価格戦略(Price)」は事例Ⅱとしては重要性の低い戦略となります。

中小企業がとるべき戦略は、高付加価値や顧客関係性の強化による差別化である(≠コスト・リーダーシップ戦略)ためです。

マーケティング・ミックス戦略の開発(チャネル戦略)

チャネル戦略(Place)」は事例Ⅱとしては製品戦略に次ぎ重要性の高い戦略です。

テーマとなるのはチャネルの多角化ですが、特に問われるのはオフラインの観点では「フランチャイズシステム」の導入による多店舗展開、オンラインの観点では「インターネット販売」によるダイレクト販売の2点です。

それぞれにおいては、導入によるメリット留意点を理解しておく必要があります。

フランチャイズシステムによる多店舗展開

フランチャイズシステムは、事業者(フランチャイザー)が加盟者(フランチャイジー)との間で契約を結び、本部のブランド力や経営ノウハウを用いて同一のイメージのもとで事業を行う権利を与えるシステムです。

フランチャイジーは、その見返りとして一定の対価(ロイヤルティ)を支払うことになります。

フランチャイズシステムの主なメリット留意点は以下となります。

フランチャイザーフランチャイジー
メリット・事業拡大に要する経営資源節約
・規模拡大による規模の経済の期待
・本部のブランド利用
・事業ノウハウ取得による営業・販売活動への専念
留意点・品質の不均一性によるブランドイメージ低下・コスト(ロイヤルティ)の発生
・自社経営が本部方針に左右される

インターネット販売によるダイレクト販売

インターネット販売は、オフラインでの多店舗展開と比較しても参入障壁も低いため、チャネル拡大に向けて優先で検討したいチャネルです。

インターネット販売の主なメリット留意点は以下となります。

メリット参入障壁が低い(店舗開設費用が発生しない)
商圏拡大の見込み
留意点・追加自社資産の必要性(従業員、物流、決済)など

特に、インターネット販売の導入により、既存チャネルでは必要なかったアセットが必要になるという留意点がおさえておく必要があります。

マーケティング・ミックス戦略の開発(プロモーション戦略)

プロモーション戦略(Promotion)」において重要なポイント、前述の「誰に」、「何を」、「どうやって」訴求するかです。

誰に」については、必ず『新規顧客』と『既存顧客』の切り口で分けましょう。

どうやって」については、事例Ⅱの与件文のヒントを活用して解答することになります。

例えば、与件文に「口コミ」や「ホームページ」、または「パブリシティ」などプロモーションに活用できる手段の記述がある場合、現状の活用状況や、訴求ターゲットなどを確認しておきましょう。

マーケティング活動の管理(顧客との関係強化)

標的市場」や「マーケティング・ミックス戦略」など明確化したマーケティング活動の管理を行う必要があります。

テーマとなるのは『顧客との関係強化』、その目的は『顧客と双方向の学習関係を築き、スイッチングコストを高める』ことです。

関係性強化のための方向性としては大きく以下2つがあります。

  1. 個別アプローチのワントゥワン・マーケティング
  2. FSPやRFM分析を活用した層別マーケティング

またその実現手段として、インターネット(Web・SNS・DM)、POS会員カードなどがあります。

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まとめ

本記事では、診断士2次試験の事例IIについて、おさえておくべきポイントを紹介しました。

事例IIは過去問を徹底的にやりこむことで合格ラインに届くことのできる事例ですが、『マーケティング・流通』をより深く学びたい方は以下の本をオススメします。

マーケティング・流通』は中小企業診断士となってから最も活用する領域ですので、試験合格だけを目的とするのではなく、ぜひプロフェッショナルになりましょう!

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