AI(人工知能)は、言葉としては聞いたことがあるものの、実社会でどのような使われ方がしているのか、また我々の生活を豊かにしてくれるはずのAIが抱えるリスクについてはあまり考える機会がないのではないでしょうか。
本記事では、AIの実社会での利用動向や、AIが抱えるリスクに対する日本や海外の制度・政策動向をご紹介します。
AI技術利用動向
近年、AI技術は様々な産業分野に応用されています。
自動運転・ドローン・スマートスピーカーなど、既に私たちの生活に入り込んでいる産業分野について紹介します。
自動運転
AI の社会実装で最も期待されている分野が自動運転です。
現在AIの自動運転導入の程度に応じて0~5の6段階のレベルづけがされており、最終的なゴールであるレベル5への到達が議論されています。
各自動運転レベルにおける自動運転の概要は以下です。
レベル0 | 運転自動化なし |
レベル1 | 運転支援 |
レベル2 | 部分運転自動化 |
レベル3 | 条件付き運転自動化 |
レベル4 | 高度運転自動化 |
レベル5 | 完全運転自動化 |
自動運転レベル5に向けては、以下の2つのアプローチが存在していることもポイントです。
- レベル1から運転自動化を段階的に目指す(TOYOTAなど自動車メーカー)
- レベル3以上の運転自動化を直接目指す(google傘下のWaymoなどITプレイヤー)
ドローン
AI技術の進展により普及が進んだのが小型無人機(ドローン)です。
ドローンについては、利便性などプラスの側面と合わせて、航空法を始めとする規制をおさえておく必要があります。
具体的には、以下の状況における飛行規制があります(飛行の場合、国土交通省の許可が必要)。
飛行禁止空域 | 空港周辺 |
150m以上の上空 | |
人家の集中地域 | |
飛行方法 | 日中での飛行 |
目視の範囲内 | |
人や物との距離(30m)の確保 | |
催し場所での飛行禁止 | |
危険物輸送の禁止 | |
物件投下の禁止 |
スマートスピーカー
ディープラーニングを活用した音声認識デバイスとして、スマートスピーカーの普及が進んでいます。
ITビッグネームの各社が、それぞれの音声認識エージェントを搭載したスマートスピーカーをリリースしているのが特徴です。
Amazon Echo | Alexa |
Apple HomePod | Siri |
Google Home | Google Assistant |
Microsoft Invoke | Cortana |
LINE Clova WAVE | Clova |
AI関連の制度・政策動向
日本国内の動向
AI社会実装が抱えるリスク
AIの社会実装が進むにあたって、そのメリットと共にリスクの検討が日本国内でされています。
1点目は、AIの進歩により、AIが人々の職を奪う可能性があることです。
もう1点は、日本国内のAI人材が不足していること。2020年には需給ギャップが広がりAI人材の不足は5万人規模に及ぶと言われています。
人間中心の社会『Society5.0』を目指す
内閣府は、前述のAI社会実装が抱えるリスクに対応すべく、「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合し創出される新たな価値により経済発展と社会課題の解決を両立する」人間中心の社会として『Society5.0』を提唱しました。
Society5.0では、その実現に必要な基本概念「人間中心の AI 社会原則」として以下の3つの価値が謳われています。
- 人間の尊厳
- 多様性・包摂性
- 持続性
また、実現を達成するための戦略として「AI戦略2019」が公表され、下記のような戦略が宣言されている。
- 「⼈間尊重」、「多様性」 、「持続可能」の3つの理念
- 2022年から高校過程で「情報Ⅰ」を必修
- 2025年にはエキスパート人材を年に2,000人育成
海外の動向
各国のデジタル・AI戦略
米国や中国などのAI先進国はもちろんのこと、各国がAIを経済成長戦略の中核に添え、独自の戦略を打ち出しています。
各国の経済成長戦略
日本 | 新産業構造ビジョン |
中国 | インターネットプラスAI3年行動実施法案 |
英国 | RAS 2020 戦略 |
ドイツ | デジタル戦略2025 |
各国の製造業のデジタル戦略
中国 | 中国製造2025 |
タイ | Thailand 4.0 |
インドネシア | Making Indonesia 4.0 |
マレーシア | Industry4WRD |
ドイツ | Industrie 4.0 |
各国のAI戦略
米国 | A Strategy for American Innovation |
欧州 | Coordinated Plan on Artificial Intelligence |
中国 | 次世代人工知能発展計画 |
米国における倫理的リスク対応
AI の社会実装に向けては、AI の倫理的リスクの考慮必要性が叫ばれています。
米国政府は、AIの進展とともに表面化が見込まれるリスクへの対応を以下に協議しています。
PREPARING FOR THE FUTURE OF ARTIFICIAL INTELLIGENCE | 実務家や学生に対して倫理観が必要であることを主張している |
THE NATIONAL ARTIFICIAL INTELLIGENCE RESEARCH and DEVELOPMENT STRATEGIC PLAN | 判断結果の理由をユーザーに説明できる AI プログラムを開発することが必要であることを主張した |
ARTIFICIAL INTELLIGENCE AUTOMATION, AND THE ECONOMY | AI の普及が最大で 300 万件越えの雇用に影響を与える可能性があることを説いている |
AIの利活用に向けては、説明可能なAI(XAI:Explainable AI)の考えが重要視されるようになりました。
これまで「ディープラーニングによって導かれた解答の思考プロセスがわからないというブラックボックスの解決」への取り組みとして、米国DARPA主導の研究で広がりました。
EUにおけるデータ保護対応
2018年、EUのプライバシーや個人情報保護などの一般データ保護規則として、GDPR(General Data Protection Regulation)が試行されました。
GDPRの特色として、単なるデータ保護にとどまらず、特定のサービス・ユーザー向けに蓄積したデータを他のサービスを再利用できる(データポータビリティ)の権利を認めています。
まとめ
AI(人工知能)の実社会での利用動向や、日本や海外の制度・政策動向をご紹介しました。
AI技術は、我々の生活に既に入り込み、我々に利便性を与えてくれていますが、その一方でAIの進歩が抱えるリスクを考慮しながら進めていく必要があります。
この領域に少しでも興味をお持ちいただけたのであれば、最新の利用動向や各国の取り組みがまとめてある「AI白書」を読んでみることをオススメします。
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