幅広い心理学のテーマの中で、『発達・教育心理学』は、人間が生まれて、子どもから大人へ育っていく変化、およびその変化を生み出す教育を扱うテーマです。
本記事では、この「発達・教育心理学」を構成するそれぞれの領域について紹介します。
発達・教育
「発達・教育」は、人間が生まれて、子どもから大人へ育っていく変化を扱う『発達心理学』、その変化を生み出す役割となる『教育心理学』からなります。
- 発達心理学
- 教育心理学
以下、それぞれの領域における主なポイントを紹介します。
発達心理学
ピアジェの発達理論
ピアジェは、認識の形成は主体が環境と相互作用する中で構成されるという『発生的認識論』を提唱、それぞれの発達段階の特徴を定義しました。
- 感覚運動期(0~2歳) … 生まれたばかりの子どもにみられる「原子反射」や対象の永続性が見られる
- 前操作期(2~7歳) … 自己中心性やアニミズムが見られる
- 具体的操作期(7~11歳) … 長さ・物質の量・数・面積・重さなどの保存の概念が生じる
- 形式的操作期(11歳~) … 論理的推論や抽象的推論が可能になる
ヴィゴツキーの発達理論
ヴィゴツキーは、発達過程を社会、文化、歴史的に構成された人間関係や文化的関係を獲得する過程として、『社会文化的発達理論』を提唱しました。
他社の援助下で達成できる水準を「発達の最近接領域」といい、大人が与える援助を「足場」といいます。
思春期・青年期
心理学における「青年期」は、中学生~大学生までの約10年間をさし、また、青年期の中でも青年前期にあたる時期を「思春期」といいます。
『アイデンティ(自我同一性)』の考え方も多く定義されており、マーシャは、「危機」と「傾倒」の2水準からなるアイデンティティ地位モデルを開発しました。
地位モデル | 危機 | 傾倒 |
同一性達成 | 経験した | している |
同一性拡散 | 経験した/していない | していない |
モラトリアム | 経験中 | しようとしている |
早期完了 | 経験していない | している |
教育心理学
学習と動機づけ
『学習』とは、「経験の結果生じる行動の変容」、また、学習における『動機づけ』は、「行動を生じさせ、目標に方向付ける一連の心理過程」とそれぞれ定義されています。
特に動機づけにおいては、学習と関連付けて『外発的動機づけ』と『内発的動機づけ』があります。
- 外発的動機づけ … 義務や賞罰、強制などで引き起こされる意欲
- 内発的動機づけ… 自発的に行動し、行動自体が目的になる意欲
どちらも一定の効果はあるものの、内発的動機づけの高い者に外発的動機づけを与えることで、逆に内発的動機づけを低下させてしまうこと(アンダーマイニング効果)があるため注意が必要です。
原因帰属
ある成功や失敗の原因がどこにあるか考えることを『原因帰属』といい、ワイナーはこれを「所在」、「安定性」、「統制可能性」の3次元で分類しています。
- 所在 … 原因がその人の内部にあるのか外部にあるのか
- 安定性… 一時的なものか、長期にわたるものか
- 統制可能性… 自分にとってコントロール可能か
原因帰属の仕方によって次の行動が決定されると考えられており、達成動機が高い人と低い人では原因帰属が大きく異なっています。
知能検査
知能検査にはさまざまな種類がありますが、特に『ビネー式知能検査』と『ウェイクスラー知能検査』が有名です。
各国で翻訳改訂されており、米国ターマンによる「スタンフォード・ビネー法」、我が国では田中寛一による「田中ビネー法」が有名です。
幼児用の「WPPSI」、児童用の「WISC」、成人用の「WAIS」が有名です。
発達障害と特別支援教育
『発達障害』には大きく3つの障害があります。
- 自閉症スペクトラム障害(ASD) … 社会的コミュニケーションや対人相互反応における持続的欠陥がある、限定された反復する様式の行動・興味・活動
- 学習障害(LD)… 特定の学習や学業的技能の使用に困難
- 注意欠如・多動性障害(ADHD)… 不注意や多動性-衝動性のため起きる長期的な不適応状況
特別支援教育では、これまで学習や生活上困難を抱えながらも指導、支援の対象外であったこれらの発達障害がある子どもも対象に含められるようになりました。
まとめ
本記事では、人間が育っていく様を扱う『発達・教育心理学』のエッセンスについてまとめてみました。
興味を持たれた方は、書籍などでさらに学ばれることをオススメします。
以下の記事にて、心理学検定について詳しくまとめていますので、ご興味あれば合わせてお読みください。
コメント