【社労士・雇用保険法】基本手当(失業手当)のしくみをマスターせよ

社労士-雇用保険法社会保険労務士

社会保険労務士試験は、労働や社会保険に関する法律からなる試験ですが、学習においては法律の全体像を把握することが重要となります。

今回は、労働法である『雇用保険法』について概要を紹介します。

雇用保険法』は、失業者に対して生活保障するための給付などについて定めた法律です。

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雇用保険の種類

雇用保険は、「失業した労働者の生活を支えるための給付を行う保険」のイメージがあるのではないでしょうか。

雇用保険はさらに、高齢や介護で働き続けることが難しくなった労働者の援助(上記と合わせ失業等給付)、育児休業中の労働者の援助(育児休業給付)、事業主に対する助成金の支給(ニ事業)など幅広い給付を行っています。

雇用保険の種類は以下のように構成されます。

雇用保険法-一覧

ここでは、雇用保険給付の中心である『失業等給付』および、『育児休業給付』について紹介します。

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求職者給付

求職者給付は、労働者が失業して再就職活動を行う際の生活保障です。

以下のように、被保険者の種類によって給付が異なります。

一般被保険者基本手当 +技能習得手当・寄宿手当、傷病手当
高年齢被保険者(65歳以上の労働者)高年齢求職者給付金
短期雇用特例被保険者(季節労働者)特例一時金
日雇労働保険者日雇労働求職者給付金

一般被保険者に対する求職者給付

基本手当

基本手当は、一般被保険者が失業した際の給付です。

「離職の日以前2年間(算定対象期間)に被保険者期間が通算12カ月以上」など一定の要件を満たした受給資格者に対し、下記の流れで基本手当が支給されます。

雇用保険法-基本手当の流れ

基本手当日額

基本手当の日額は、下記の計算で算出されます。

基本手当日額 = (在職最後の6カ月賃金総額/180) × 45~80%
所定給付日数

基本手当には、支給日数の上限(所定給付日数)が定められています。

一般離職者3~5カ月
特定受給資格者(倒産・解雇等)3~11カ月
特定理由離職者(障碍者等)5~12カ月

技能習得手当・寄宿手当

技能習得手当・寄宿手当は、受給資格者が公共職業訓練等を受ける際の手当です。

技能習得手当受講手当文房具費
通所手当交通費
寄宿手当寄宿手当宿泊費

傷病手当

傷病手当は、受給資格者が傷病のため、継続15日以上再就職できない際に支給される手当です。

高年齢被保険者に対する求職者給付

高年齢求職者給付金は、高年齢被保険者が失業した際の一時金給付です(離職以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あることが支給要件)。

給付額は、雇用保険加入期間によって変わります。

雇用保険加入期間1年未満基本手当日額の30日分
雇用保険加入期間1年以上基本手当日額の50日分

短期雇用特例被保険者に対する求職者給付

特例一時金は、短期雇用特例被保険者が失業した際の一時金給付です(離職以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あることが支給要件)。

給付額は、雇用保険加入期間にかかわらず、基本手当日額の40日分です。

日雇労働被保険者に対する求職者給付

日雇労働求職者給付金は、日雇い労働被保険者が失業した際の一時金給付です(失業日の属する月の前2カ月で通算26日以上働いていたことが支給要件)。

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就職促進給付

就職促進給付は、失業者の再就職を支援、早く就職できるよう援助する給付です。 「就業促進手当」を中心に、「移転費」、「求職活動支援費」から構成されます。

就業促進手当

就業促進手当は、受給資格者が再就職した際に支給される手当で、就業形態などにより「就業手当」、「再就職手当」、「常用就職支度手当」などの種類があります。

移転費

移転費は、受給資格者が、公共職業安定所(ハローワーク)の紹介した会社に就職、または公共職業訓練を受ける際の移転に関わる費用を支給する手当です。

求職活動支援費

求職活動支援費は、受給資格者が再就職できるよう求職活動を支援するための手当です。

広範囲の就職活動のための交通費・宿泊費のための「広域求職活動費」、短期資格講習の費用補助となる「短期訓練受講費」、子供の一時預かりの費用補助のための「求職活動関係役務利用費」で構成されます。

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教育訓練給付

教育訓練給付は、一般被保険者や高年齢被保険者が、自主的に能力開発をするため教育訓練を受けた際の費用援助する給付です。 大きく、「教育訓練給付金」と「教育訓練支援給付金」から構成されます。

教育訓練給付金

教育訓練給付金は、被保険者が、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、終了した際に援助するものです。

教育訓練の内容により下記の給付金に分類できます。

一般教育訓練給付金受講費の20%(上限額:10万円
特定一般教育訓練給付金受講費の40%(上限額:20万円
専門実践教育訓練給付金受講費の50%(上限額:40万円

教育訓練支援給付金

教育訓練支援給付金は、45歳未満の失業者が専門実践教育訓練を受講する際の生活費の補填で、1日あたり基本手当の日額の80%が支給されます。

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雇用継続給付

雇用継続給付は、定年後の再雇用時の給与減額の補填や、介護休業に対する給付により離職せず雇用継続できるよう援助する給付です。

大きく、「高年齢雇用継続給付」と「介護休業給付」から構成されます。

高年齢雇用継続給付

高年齢雇用継続基本金

高年齢雇用継続基本金は、雇用保険の加入期間が5年以上の非保険者が、60歳以降に継続して働いているが、賃金が60歳時賃金と比較し75%未満に低下した際に60歳以降賃金の15%が支給される給付です。

雇用保険法-高年齢雇用継続基本給付金

高年齢再就職給付金

高年齢再就職給付金は、基本手当を受給したことがあり、60歳以後再就職したが、賃金が離職時賃金と比較し75%未満に低下した際に再就職賃金の15%が支給される給付です。

雇用保険法-高年齢再就職給付金

介護休業給付

介護休業給付(介護休業給付金)は、一般被保険者や高年齢被保険者の介護離職を防止するため、介護休業期間中の生活費を援助する給付です。

介護休業開始時の賃金月額の67%を3カ月の支給期間(複数回に分け介護休業を取得する場合通算して93日)で支給します。

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育児休業給付

育児休業給付は、一般被保険者や高年齢被保険者が育児休業した際に、退職せず働き続けるよう援助する給付です。

育児休業開始時の賃金月額の67%を育児休業開始日から180日間、50%を181日目以降、子が1歳になるまで支給します。

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まとめ

今回は『雇用保険法』について紹介しました。

社労士は法律の試験であるため、制度詳細や条文にフォーカスしてしまいがちですが、法律の位置づけや全体像を把握することが重要になります。

長い社労士学習においては、試験勉強のフェーズにかかわらず、下記の入門本に立ち返ってみるのもオススメです。

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