社会保険労務士試験は、労働や社会保険に関する法律からなる試験ですが、学習においては法律の全体像を把握することが重要となります。
今回は、社会保険である『健康保険法』について概要を紹介します。
『健康保険法』は、仕事以外が原因の疾病に対する補償について定めた法律です。
健康保険被保険者の種類・保険料
被保険者の種類
健康保険の被保険者は、適用事業所に使用される者である「一般被保険者」や「日雇特例被保険者」、および一定要件を満たすものが任意で退職後も継続して被保険者となる「任意継続被保険者」や「特例退職被保険者」に分類できます。
被扶養者
健康保険は、被保険者本人に対しての保険給付だけでなく、健康保険に加入した扶養家族(被扶養者)の傷病に対しても保険給付を行います。
被扶養者となるには、以下のいずれかを満たしている必要があります。
- 被扶養者により生計を維持する以下の者
- 直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母など)
- 配偶者(内縁含む)
- 子
- 孫
- 兄弟姉妹
- 住居・家計を共にし、かつ被扶養者により生計を維持する以下の者
- 3親等内親族
- 内縁にある配偶者の父母・子
- 内縁にある配偶者死亡後の父母・子
生計を維持とは、年収130万円未満(60歳以上または障害者の場合180万円未満)をいいます。
保険料
健康保険の保険料額は、被保険者の報酬や賞与から算出された標準報酬月額や標準賞与額に対して、保険料率を掛けて計算します。
賞与に係る保険料 = 標準賞与額 × (一般保険料率 + 介護保険料率)
※介護保険料は、介護保険第2号被保険者(40~65歳)のみ対象
保険料は、原則、事業主と被保険者が1/2ずつ負担し、事業主が厚生年金保険料と合わせて納付します。(任意継続被保険者の場合は全額被保険者負担)
健康保険の種類
健康保険には、大きく被保険者向けの給付と、被扶養者向けの給付があります。
健康保険法に基づく保険給付は以下のようになります。
傷病事由の保険給付
傷病事由の保険給付は、被保険者および被扶養者が病気やケガをした際の治療などに対する給付です。
以下では、代表的な給付を紹介します。
療養の給付
療養の給付は、健康保険の主たる保険給付です。
被保険者が業務上以外の事由で傷病となった際に、病院等で健康保険証(またはマイナンバーカード)により、一部負担金で診療などの治療、投薬などを受けられます。
一部負担金の負担割は以下の通りです。
70歳未満 | 3割 | |
70歳以上 | 一定以上所得者 | 3割 |
一定以上所得者以外 | 2割 |
療養費
療養費は、やむを得ない理由で自費で受診した際などにおける、建て替え費用です。
家族療養費
家族療養費は、以下の被保険者向け保険給付に相当する、被扶養者向けの給付です(給付先は被保険者です)。
- 療養の給付
- 入院時食事療養費
- 入院時生活療養費
- 保険外併用療養費
- 療養費
高額療養費
高額療養費は、長期の療養や入院などのため自己負担が高額になった場合に、1月の自己負担額が一定金額を超えた部分を払い戻す制度です。
移送費・家族移送費
(家族)移送費は、病気やケガによる病院への移動が困難な被保険者(または被扶養者)の、移動に要した費用の支給です。
傷病手当金
傷病手当金は、療養のため会社を休業し、報酬を受けられない場合に支給される給付です。
支給額は、下記の計算式で算定されます。
死亡事由の保険給付
死亡事由の保険給付は、被保険者および被扶養者の死亡に対する給付です。
埋葬料・家族埋葬料
(家族)埋葬料は、葬式代などの補助となる一時金です。
被保険者が死亡した場合、(被保険者により生計維持されていた)埋葬を行う者に対し5万円支給されます。(一方、被扶養者が死亡した場合は、被保険者に対し支給されます)
埋葬費
埋葬費は、埋葬料と同様葬式代などの補助となる一時金ですが、実際に埋葬をした者に支給されます。
被保険者が死亡した場合、(被保険者により生計維持されていない)埋葬を行った者に対し実費(最大5万円)が支給されます。
出産事由の保険給付
出産事由の保険給付は、子どもの出産に伴う給付です。
出産育児一時金・家族出産育児一時金
(家族)出産育児一時金は、入院費用などによる経済的負担の軽減を図るための一時金です。
被保険者(または扶扶養者)が出産(妊娠期間4月以上の死産・流産・早産を含む)した場合に、40.4万円(産科医療保障制度加入の医療機関での出産の場合42万円)が被保険者に対し支給されます。
出産手当金
出産手当金は、出産前後に会社を休み報酬を受けられない期間の生活保障としての支給です。
「出産の日以前42日から、出産の翌日以後56日まで」下記の計算式からなる算出額が支給されます。
まとめ
今回は『健康保険法』について紹介しました。
社労士は法律の試験であるため、制度詳細や条文にフォーカスしてしまいがちですが、法律の位置づけや全体像を把握することが重要になります。
長い社労士学習においては、試験勉強のフェーズにかかわらず、下記の入門本に立ち返ってみるのもオススメです。
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