DX(=Digital Transformation)は、ビジネスや技術、双方の幅広い観点から理解する必要があります。
本記事では、DXのTransformation(ビジネス)領域から、『ビジネスイノベーション』について紹介します。
戦略・理論 (経営を革新させるIT)
DXでは、様々なビジネス変革が実現しています。
今回は、『ビジネスイノベーション』について、おさえるべきトレンドを紹介します。
ビジネスイノベーション
経営とイノベーション戦略
Society5.0
『Society5.0』は、我が国がSociety1.0~4.0に続き目指すべき社会を「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合し創出される新たな価値により経済発展と社会課題の解決を両立する」人間中心の社会として、日本政府が提唱しました。
Society1.0 | 狩猟社会 |
Society2.0 | 農耕社会 |
Society3.0 | 工業社会 |
Society4.0 | 情報社会 |
Society5.0 | 創造社会 |
ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する「スマート農業」もスマートシティの一つです。
Society5.0の社会においては流通する「データ」が飛躍的に増大します。
DX戦略においては、日本のみならず各国で以下のような戦略を掲げています。
米国 | IIC |
中国 | 製造強国2025 |
ドイツ | インダストリー4.0 |
シンギュラリティ
『シンギュラリティ(技術的特異点)』は、AIが人類の知能を超える転換点や、それにより人間の生活に大きな変化がおこる概念で、2045年に人間とAIの能力が逆転(シンギュラリティに到達)すると提唱されています。
シンギュラリティの到来を見据え、AIを誰もが使えるようにする『AIの民主化』を実現する必要があるといえます。
プロセスイノベーション
ダイナミックセル生産方式/マス・カスタマイゼーション
インダストリー4.0の要は『ダイナミックセル生産方式(ダイナミックセル・システム)』と言われています。
ダイナミックセル生産方式が推進すると、最終的にひとつひとつ仕様が異なる製品の生産を行うことができる『マス・カスタマイゼーション』が実現します。
MBSE
MBSE (Model Based Systems Engineering)は、モデルを用いて進めるシステムズエンジニアリングで、自動車や航空・宇宙など複雑で大規模なシステム開発に導入が進んでいます。
プロダクトイノベーション
ソフトウェア化する世界
デジタル技術の活用により「ソフトウェア化」が進むことで、1つの物理的資源を利用者にとって個別資源として扱うことが可能となり、ビジネスや生活の利便性が向上します。
- クラウド・コンピューティングによる、データセンターのシステム資源の自社使用
- 3PL(third-party logistics)による、共同倉庫の自社使用
- シェアリング・エコノミーによる、個人資産の自分使用
マーケティングイノベーション
モノのサービス化
DXの促進により、現実世界のあらゆるモノがインターネットに繋がることで、デジタル世界にデジタル・コピーができます(モノのデジタル化)。
さらにデジタル世界で創出した情報・価値を現実世界にフィードバックするエコシステムにより、これまでハードウェアにあったモノの価値がソフトウェアや、サービスへシフトしています(モノのサービス化)。
官民データ活用推進基本計画
全ての国民がデジタル技術とデータ利活用の恩恵を享受すると共に、安全で安心な暮らしや豊かさを実感できるデジタル社会の実現に向け、政府全体のデジタル政策を「官民データ活用推進基本計画」として取りまとめました。
「データ」の取り扱いを定義することで、データ流通・利活用を促進するため以下のような取り決めがされています。
データ利用に関する適切な契約
データに関する取引は契約類型・条件が様々、またAIなど最新技術に関する理解が進んでいないため、契約の取り決めも定まっていない課題がありました。
データ利用に関する契約のありかたを整理、またAIなどの技術に係る権利や責任関係について留意点を示すことで、データ流通・利活用の促進を行います。
匿名加工情報
匿名加工情報は、特定の個人を識別できないよう個人情報を加工して得られる個人に関する情報です。
個人情報に含まれる氏名、生年月日、個人識別符号などを削除し個人情報を復元できなくすることで、情報利用に提供者の同意を不要としデータ流通・利活用を促進することができます。
デジタルカルテル
カルテルとは、同業者間で価格・供給量などについて意思連絡を取り互いの競争を回避するもので、自由競争による経済秩序を乱すものとして、独占禁止法で禁止されています。
これまでのような人が行うカルテルではなく、AIなどのアルゴリズムによる価格決定により形成されてしまう『デジタルカルテル』が問題視されています。
組織イノベーション
DXの実現のためには、変化に俊敏に対応できる企業文化・体質の実現が不可欠です。
以下はそのような組織づくりのための理論・方法論です。
デザイン思考
デザイン思考は、目標を起点に最適な問題解決策を創造する手法です。
定義・研究・アイディア出し・プロトタイプ化・選択・実行・学習のプロセスで、ロジカル思考と対照的に、最初に発散思考により多くの解決策を探り、最終的に収束思考で案を絞り込んでいきます。
リーンスタートアップ
リーンスタートアップは、コストをかけず最小限の機能を顧客に早期に提供、顧客のフィードバックを分析し製品・サービスの改善するプロセスを短期間に繰り返すことで新規事業の成功確率を高める手法です。
市場価値が無いと判断した場合に早期撤退するための手法でもあります。
アジャイル
アジャイルは、顧客視点で最も価値を提供できる、優先すべきことに短期でプロセスを回す手法です。
環境変化が激しく、状況対応への迅速な対応が求められる時代において、アジャイル経営の考え方が必要とされています。
MOOC (Massive Open Online Courses)
DX時代における人財育成の観点から、教育のオープン化が進んでいます。
インターネット環境さえあれば、世界中のトップクラスの講義を、いつでもどこでも誰でも受講することができる大規模公開オンライン講座「MOOC (Massive Open Online Courses)」が広まっています。
まとめ
本記事では、DXのTransformation(ビジネス)領域から、『ビジネスイノベーション』について紹介しました。
DXのビジネス領域については、下記書籍が最もよくまとめられていますので、興味を持たれた方は、合わせてお読みすることをオススメします。
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